定年後再雇用者の基本給減額の是非が争われた訴訟で、名古屋地裁が「同じ仕事なのに、基本給が定年前の6割を下回るのは不合理な待遇格差に当たる」と認めて、名古屋自動車学校にたいして未払い賃金分の支払いを命じた(昨年10月)。
「6割を下回るのは違法」とした判決は、初めてである。京王バス事件では、バス乗務員が定年後車両清掃に配転され、月10万円未満の賃金(年収で30%以下)にされた違法性を争っていた。判決では合法とされ(東京地裁判決)、最高裁がそれを維持するという考えられない酷い判断を行なった。トヨタ自動車事件(名古屋高裁)判決など、「清掃業務につかせたのは違法」として損害賠償を命じた判決もあるが、地位確認(労働者としての継続就労)を認められたケースはない。
60歳から65歳の労働者は全国で430万人もいる。死活がかかる問題だ。厚労省管轄の労働政策研究・研修機構(JIL)の調査によると、60歳で嘱託・契約の非正規雇用となるのは60%、同じ仕事は83%、賃金の中央値は70%(12年)という。年金給付は現在、65歳から。高齢者雇用安定法は60歳以上の雇用継続を認めているだけで、賃金・労働条件に制限条項はなくザル法というしかない深刻な問題である。60歳以降の仕事と同じ他の労働者との比較ができる場合は、旧労働契約法20条(現在はパートタイム・有期雇用労働法8条)で争いができる。60歳を契機に労働条件の一方的低下を防ぐ方法は、法的にほとんどない状態だ。非正規雇用労働者の闘いは、粘り強く続く。65歳定年制の法制度実現をめざし、現場の労働運動の力で高齢労働者の雇用を守っていかなければならない。(石田)