長崎県の離島のA市にあるN社の販売部門店で働く非正規雇用労働者の実情を報告する。

▽非正規の生の声と姿

 Aさん(男性)は、退社時に「奴隷だ。給料上げろ」と声をあげた。Bさん(男性)は、勤務歴は5年を超えているが、「社員になるには、何かの資格がなければなれない」と理不尽な壁をつくられている(5年の無期転換は地方には届いてない)。何度か彼がじっと考え込んでいる姿が見られた。Cさん(女性)は、愛社精神は強いが、「私らの頑張りのうわまえをはねているのは○○か幹部のどっちだろうね」とうめくように言った。

 N社は、市内では3本の指に入るほどの従業員を抱えており、販売店舗では各種の農業関連商品を扱っている。この地域では公共性を持つ企業だ。

 従業員は、レジ打ち、お客さんへの商品説明、注文への対応、メーカーへの発注、商品の運搬・配達など、多岐にわたる業務をこなしている。店長のみが正規職で、あとの4〜5人は1年契約の臨時職。各人は月24日出勤のシフトで勤務。欠員が出ても応募者はなかなか現れない、不人気職場である。私はN社店舗の雇用実態に触れ、非正規雇用のきびしい現実を実感できたと痛感している。

▽違法だらけ職場

 1.冬期の日額賃金は6700円だが、夏季は7300円だ。夏季は1時間の残業だが、600円しか払われていない。この600円は「手当」だという。これは明らかに労基法に抵触している。ここで未払い賃金が発生している。

 2.早出勤務は8時30分からだが、実際は8時出勤が常態化している。「そうしないとオープンに間に合わない」のでサービス労働になっているのだ。ここでも未払い賃金が発生している。

 3.正月休暇の問題。12月31日、17時までの勤務命令に店長が「12時で上がりたい」と要望したが却下された。結局、1月1日と2日のみが正月休暇となった。この販売店は一般のスーパーとはちがい、食料品は置いていない。牛の飼料はあらかじめ飼育農家に周知しておけば問題は起こらない。一方、N社本体では6日間連続の休暇で、忘年会も行われている。

 販売職場の労働者は「忘年会どころではない」。暮れから年明けは、お客さんの数も極端に少なく、ヒマを持て余す状況だ。店を開けておく理由はただ一つ、幹部のメンツなのである。ここでも、非正規雇用労働者への配慮は見られない。

 4.交通費はないのと同じ。往復約10キロのガソリン代×24日の支給額は月額700円に届かない。誰もがあきれてしまう。「交通費は出してるよ」というアリバイである。ここにも経営幹部の「人権感覚のなさ」が表れている。(つづく)