昭和18年10月21日 

東京神宮御苑 学徒出陣壮行会

あなたはどんな思いで見つめたのか

「芸術を志す人間は非国民」といわれた時代

絵筆ではなく銃を持たされ

序列が下の者から敗色濃い南方戦線へ

生きて帰ることはなかった

美に敏感なあなたが

空の 海の 山の青を描くことはなかった

父 母 妹 恋人を描いた

描く人 描かれる人

張り詰めた空気が流れた

表で自分の壮行会行列が

その間も絵筆を走らせた

必ず生きて帰って絵を完成させる

キャンバスもパレットも絵筆もそのままに

あなたの家族が命がけで戦火からを守った絵

いま 私の目の前にある (のりこ)

『解説』無言館は長野県上田市古安曽にある戦没した美術学生の慰霊のための美術館。館主の窪島一郎さんと画家の野見山暁治さんが遺族を回って作品を収集。現在、約130人の作品や遺品600点を展示・保管している。