年末年始「コロナ緊急相談会」が全国各地で開かれた。08年リーマンショック時の「年越し派遣村」の再現である。東京では、新宿だけで3日間で337人の相談があり、各所で都が確保したビジネスホテルの斡旋や、食料の配布、「年越し大人食堂」などが取り組まれた。仙台では190件の相談中、女性の相談が男性を上回る48%、非正規雇用労働者が77%。年齢別では20代が42件と最多。業種別では小売飲食従事者が45件で最多。相談内容では会社都合の休業問題が113件で最多。

 今回の特徴は女性、若者、学生、外国人の相談が多いことだ。女性の多くは、働くシングルマザーだ。今月9日の東京東部労組の労働相談では「『予約が入らないから』との理由で休まされている。社員には補償が支払われているのにアルバイトには補償がない。1月末での店舗閉鎖も通告された」という都内すし店で働くアルバイトの女性が訪れた。コロナ感染拡大の影響が、女性の非正規雇用労働者を直撃しているのだ。

 厚労省の統計によると、2020年8月の非正規雇用は前年度同月比で120万人減、そのうち女性が80万人である。真っ先に非正規女性労働者が切られたのだ。エッセンシャルワーカーの多くが女性であり、卸売・小売の4割弱、医療・福祉の3割強が非正規雇用の女性で占められ、安倍政権下の7年間余で女性雇用は300万人増加し、その半数が非正規雇用だ。そのうち年収100万円以下が44%、100〜190万円が38%と女性のワーキングプアが増加している。そこにコロナ禍で集中的に犠牲を強いられているのである。

必要なのは罰則ではない、補償だ

▽女性の自死者4割増

 リーマンショック以上となったコロナ禍での解雇・雇止めは8万121人(1月6日時点)となった。これは労働局などの公式相談数であり、そこにたどり着けない人が多数いると思われる。阪神大震災やリーマンショックの経験からいうと、実態はその数倍と見ていい。自死者数は、3カ月連続で増加し、8月は前年より251人多い1854人で、うち女性が651人と4割も増加している。コロナに感染する以前に、解雇・雇止め・休業で女性非正規雇用労働者が死に追いやられている。これがGNP世界第3位の日本の現実だ。

 外国人実習生が置かれている状況も深刻だ。コロナ禍で劣悪な労働環境に耐えかね、逃げ出した実習生は8796人(半数がベトナム人)にのぼる。単純労働分野に門戸開く新資格「特定技能」創設の改正入管法が施行されてから、特定技能は41万人中わずか1621人。家畜や果物の大量盗難事件の背景には、このような過酷な状況があることを忘れてはならない。「国の政策で来日しているのだから、最後まで面倒見るべきだ」(アジアの若者を守る会代表、沼田惠嗣氏)という訴えは当然だ。 必要な人は誰でもPCR検査、療養、入院を無料で受けられるようにするべきだ。この極寒の中で相談にもいけず自宅や路上で凍死や餓死者を出してはならない。それをサポートするエッセンシャルワーカーの待遇改善に国は尽力すべきである。それは財源の問題ではない。100%休業補償(事業者、労働者)、持続化給付金、家賃支援給付金の継続と拡充、一律10万円(また20万)の給付金の毎月保証、これらで社会の崩壊を防ぐことが求められている。これを行政に実行させ、資本に従わせる政治や運動が求められている。

▽内部留保を吐き出せ

 大企業の内部留保は459兆円に膨らんでいる。消費税を増税し法人税を減税した結果だ。労働者から奪ったものはコロナ対策費として労働者に返すべきだ。10兆円を拠出したとしても459兆円のわずか2%にすぎない。

 消費税はただちに5%に戻し、ゼロ化すべきである。大企業の法人税を引き上げ(中小企業は20%なのに大企業は10%)、所得税の累進率(5000万〜1億円以上富裕所得者に現在の20%台から30%以上に)を改めなければならない。今必要なのは「公助」であって、菅のいう「自助」(=棄民政策)では断じてない。

▽こんな社会でいいのか

 1月7日、政府は1都3県に「緊急事態宣言」を出し、13日には11都府県に拡大した。12日、政府は罰則強化を柱とするコロナ対策関連法の改正案を提示した。コロナ禍で苦しんでいる人びとを罰則で抑えこもうとする姿勢に怒りを禁じ得ない。危機に乗じて、中小企業を倒産に追い込み、地域経済に密着した信金・信組の再編を強行しようとしている。まさに「ショックドクトリン」(ナオミ・クライン)そのものだ。やることが違うだろう。菅政権の下で労働者・市民は命を守ることはできない。社会を労働者民衆の手に取り戻し、作り直す。それが新しい労働運動の社会的責任であり役割である。

(石森竹山)