今回の「種苗法」改定の主眼は、種苗の「海外流失を防ぐことだ」という政府広報がされ、「シャインマスカットが中国で…」「イチゴやサツマイモが韓国でバイオ増殖され、日本の知的財産が勝手に使われ…」などと、マスコミや弁護士会もはやし立てました。国民の多くは、排外差別感情をくすぐるキャンペーンで、「種苗法」改定は正義だと支持しました。

 私は、連合会の皆さんや種子条例制定運動の中で面識を得た地方議員さんたちに呼びかけ、「種苗法」改定反対へ市町議会での意見書採択に取り組みました。結果、北広島、三次、安芸高田、呉、神石高原の5つの市町議会で意見書が採択され、政府と国会に提出されました(筆者調べ)。

 12月2日『種苗法』は、改定されました。「広島県主要農作物等種子条例」制定運動に力添えしてくれた友人から「法の改正は優良品種流出を防止するため、韓国や中国に対抗するためには必要なこと」というメールを受け、同じようなメールや話はいくつも受けました。それらの方々には「種苗法の改悪の本質は、日本の農業を国際的な種苗農薬資本に委ねることであり、中国、韓国に…は口実です。日本農業の挽歌です」と答えました。

 種苗の海外流失を防ぐ最良の手立ては、相手国で品種登録をすることが最も有効な手立てだということは農水省も言っています。農水省は、それを指導もせずサボってきました。例えばシャインマスカットは国の研究機関で開発されたブドウです。国が中国や海外で品種登録をしていれば、法的対抗措置ができ、あのような流失騒ぎにはなっていと考えられます。国の不作為で起きた災厄の責任転嫁です。マスコミは、それは報道しません。社会における報道の権力性ですね。

▽彼らに食と食糧の安全・安心は委ねられない

 この度の「種苗法」改定は、新自由主義的経済改革推進の一環として農家・農民から「(特許)登録品種の農家の自家増殖」を認めた権利をはく奪し、抗う者、逆らう者には刑罰(共謀罪対象)で威嚇、抑圧し、TPP条約などで潤う国際的な独占企業、遺伝子組み換え種子を販売する彼らの企業に委ねる農業分野の規制緩和をさらに推し進めるということです。彼らは野菜や果物の種苗も扱いますが、主戦場は「主要農作物の種」と腹を決めています。彼らは、独占的利益を得るためにのみ行動し、「危険性が証明されていないものは規制してはいけない」と主張し、ゲノム編集食品も含め流通させようとしています。農産物や食品の安全性確保には、危険性があるかもしれないものはいったん排除する「予防原則」の考え方が必要ではないでしょうか。「洪水よ、我が去りし後に来給え」では困ります。

 種(たね)はいつの時代でも、ビーナスであり糧です。私たちは、食の安全・安心、おいしい食糧の供給を彼らに根本で委ねていいのでしょうか。新年にあたり、ともに考えてみましょう。

(おわり)

(筆者は広島県種子条例制定を求める会連合会・代表幹事)(見出し・小見出し/本紙編集委員会)