▽お茶の間から動いた

 昨年12月14日、大阪市内で開かれた「都構想」否決の意義と課題を考える市民討論集会では、 会場から13人が発言。多くがこの二度目の「都構想」であらためて事実を知って運動に参加してきた女性たち。

 「賛成した人に知ってほしいということ。事実が知らされてない」「ビラを事務所にとりに行った」「小さなアンプをもって仕事帰りに一人街宣」「カフエでの小さな学習会」「今回市立高校がなくなることも知らない人がいた。」外国籍住民を排除した住民投票の問題や労働組合活動を押さえつける維新の動き等への批判も出てきた。赤ちゃんを抱いた母親、複雑骨折してやっと動ける男性。こういう事例が無数につくられて逆転をつくりだしたのである。

 まさに「お茶の間から動いた」(関学大冨田宏治教授)ということを実感した。市民が市民を組織するというパターンが生み出され、今回の再否決につながった。広域化条例との闘いはそれをさらに進める闘いとなっていく。すでに「49%の賛成票」対象にしたビラも市民のカンパで大量に作られ、自主的に活動する市民の手で配布が始まっている。

 以下の評論は13人の発言とともに今後の闘いの方向を示すものである。「(投票出口分析から)若者が「大阪市存続」を望んだ。つまり、大阪市の若者が、自分達の未来を、大阪市を解体してつくられる特別区ではなく、「大阪市共同体」を基本として築きあげたいと希求したことの結果として、大阪市廃止が否決され、大阪市の存続が選択されたのです。」(京大大学院藤井聡教授)まさにそうだ。

▽自治破壊の広域一元化

「都構想」が再否決された。それと全く同じことを「広域一元化」という名の条例をもって行おうという暴挙が準備されている。説明会もなされない、一ヶ月足らずの議会で強行されようとしている。再び大阪市の財源を奪おうとするのである。大阪市廃止と4特別区への移行が形を変えて復活されようとしているのだ。

 維新副代表の吉村府知事は11月6日の会見で、広域行政一元化(二重行政解消)に関する条例案を来年2月議会に提案すると表明。大阪市が府に成長戦略などの業務を一部委託すると同時に、財源も移すべきと訴えた。一元化条例案の骨子は都構想で府に移管するとしたもののうち、「産業振興」「都市魅力向上」「まちづくり、都市基盤整備」に絞り、消防・水道は別途広域化を検討する。身近な福祉、健康、保険、教育の分野は対象外とするといっているが、都構想と同様に市の427事務と約2000億円の財源を府に移管する。

 府市の内規である要綱でしかない副首都推進本部(15年12月)を��司令塔�≠ノして「行政」を行う全国でも異例の制度だ。知事が最終決定権をもつ仕組みで、「市の自治権を侵害」するもの。いままで、「成長戦略」などは同本部で協議するものの、最終的には府と市それぞれが決定してきた。それを府が全て決められる。市の自治権の侵害—政令指定都市大阪の地方自治の破壊そのものである。(黒山 一鉄)