「GoToトラベル」の延長費1・1兆円などを盛り込んだ今年度第3次補正予算が、1月28日の参院本会議で自民、公明と日本維新の会などの賛成多数で可決成立した。補正予算の総額は19兆1761億円のうちの6割強が「コロナ後に向けた経済対策」。コロナ拡大防止策は全体の2割でしかない。年明けから感染爆発の段階に入っているなかで、なぜ「コロナ後の経済対策」優先なのか。観光庁発表のトラベル予算の執行額は4842億円にとどまっており、1・1兆円を年度内に使い切ることは不可能である。

 国会では野党が「コロナ集中対策」として医療機関・従事者や生活困窮者らへの支援を盛り込んだ組み換えを求める動議を出したが、与党はこれらを否決。「緊急事態宣言」前に組まれた予算を組み換えるという、当たり前のことすら菅政権はできなくなっているのだ。

▽入院拒否で懲役

 新型コロナ対応の特別措置法悪案では、「緊急事態宣言の前の予防的な措置」として「まん延防止等重点措置」の規定を新設。重点措置が出されると、都道府県知事は事業者に休業や時短を命令することができ、違反した場合は30万円以下の過料となる。ところが、どういう感染状況になれば同措置を出すことができるのかは、「政令で定める」となっていて、明らかにされていない。しかも国会への報告義務もないため、「私権制限を伴う権限を政府にフリーハンドで与え、罰則に歯止めがなくなる」といった批判の声があがっている。

 また感染症法改悪案では、入院を拒否すると「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」、積極的疫学調査を拒否した場合でも「50万円以下の罰金」を科す。ところが政府は、実際に入院拒否や調査拒否が感染拡大とつながりあるという立法事実を示していない。「罰則ありき」から見えるのは、コロナ禍に乗じて、政府の権限を強化したいという政治的野望だ。

▽責任をとって退陣を

 内閣支持率は33%に下がり、不支持率が45%に増えて支持を上回った(1月23、24日朝日新聞社調べ)。当然である。安倍政権は、モリ・カケ・サクラ疑惑の隠蔽に追いまくられてまともに国会を開かず、破産必至の東京五輪の開催にこだわって肝心の感染対策を怠った。「アベ政治」を継承した菅政権は、国会は閉じたままで、見切り発車したGoToキャンペーンの中止を求める専門家の提言を無視して年末まで継続し、感染の急拡大をもたらした。安倍・菅政権の責任は重大である。ここまで事態を放置してきた自民党と公明党には政権を担う資格も能力もない。彼らにいうべき言葉は「責任をとって退陣せよ」、ただそれだけである。