641日もの長期拘留。89人に及ぶ逮捕者。組合活動を理由とした刑事事件としては戦後最大規模。「なぜ私たちは逮捕されることになったのか。この本を通じ私たち関生支部の活動の本当の姿、そして『関西生コン事件』とよばれる現在の事態の真相を、一人でも多くの方々に知っていただければ幸いです」と武委員長は語る。

 中小零細の生コン労働者は、「正月三が日以外にも休みが欲しい」「雨で仕事がなくなっても賃金を払ってほしい」「トイレットペーパーを置いてほしい」「仮眠時間をもう少しほしい」、そんな切実な要求から始まった関生支部のたたかいは、年間休日125日、平均年収800万円を実現し、未組織労働者も含めた労働環境の底上げをかちとってきた。

 日経連の元会長・大槻文平は「関生の運動は資本主義の根幹にかかわる運動」と言い、日経連の元役員は「法律などを守っていたら組合をつぶすことはできない。われわれのバックには警察がついている」と語る。なぜ、彼らは関生を恐れるのか。

 一つには、関生支部が産業別労組であり、企業の枠にとらわれないからだ。個別企業の問題を、業界内の労組全体で対応する。たとえ一人の不利益であっても、全体の不利益につながるという考え方だ。日本の多くの労組は、企業内組合だ。会社あっての労組だから、激しい企業間競争のなかでは、「賃下げ、合理化・首切り」を受け入れて「会社を守る」となり、たたかえなくなる。その限界を超えたのが関生支部の産別運動だ。

 二つには、関生支部が中小企業との協同を実現したからだ。中小零細企業は、大資本(セメント大手やゼネコン)の値下げ圧力と、中小零細間の生き残り競争にさらされる。労働組合が「安かろう、悪かろう」という状態を放置すれば、結果として労働者の生活と権利は守れい。生コン労働者を組織する関生支部と中小企業の経営者が手を結んで協同組合を結成し、大企業との交渉に当るこで業界の健全化と生コン価格を適正化を図り、労働者の賃上げを実現した。

 ところが、協同組合の「相互扶助」の理念を忘れ、一部幹部の私利私欲によって運営されてきた大阪広域協組は生コン価格の値上がりで生まれた利益を労働者に還元するという約束を反故にした。これに抗議したことが弾圧された。

 武委員長は、「いかなる恫喝も、暴力も、手錠もブタ箱も、私たちの運動をとめることはできません」「業界の民主化、組織の量的、質的強化で『やられたら、やり返す』関生魂を発揮し勝利します」と語る。21春闘に向けて、ぜひ、この本を手にしてほしい。(関西合同労働組合

・高崎庄二)