1月22日、核兵器の使用や開発を一切禁止する核兵器禁止条約が発効した。核兵器禁止条約は、全20条で構成され、核兵器の開発や実験、保有、使用、「核兵器を使用する」という威嚇などを全面禁止する、史上初の国際条約である。17年7月、国連で122カ国・地域の賛成により採択され、同年9月に署名・批准が始まった。昨年10月24日、批准数が発効に必要な50カ国・地域に達し、90日後の1月22日に発効した。現在の批准数は51カ国・地域であるが、米ロなど核保有国は条約自体に反対しており、日本は署名すら拒否している。
広島では、コロナ禍で制限がある中、被爆者団体や市民団体が声明の発表や原爆ドーム前などでアピールを行ない、核廃絶への行動を訴えた。原爆ドーム前では広島県被爆者団体協議会の蓑牧(みまき)智之理事長代行が「被爆者だけではなく、世界の人たちにとって歴史的な出来事。希望の光が見えたようだ」と話した。「原爆の子の像」の前は、小学生から20代の若い人たちが創作劇を上演し、被爆地の次の世代が想いを表現した。リモートでのイベントも多く開催。被爆ピアノによる演奏会も行なわれた。
広島市役所では原爆小頭症被爆者と家族の会「きのこ会」がメッセージを発表した。会は小頭症被爆者とその家族の生活支援を中心に活動してきたが、今回の核禁条約の発効は核廃絶への大きな一歩と評価して記者会見を行なった。「もし、母親のおなかの中で被爆することさえなかったら、彼らはまったく別の人生を歩んでいた」「核兵器は放射線によって、お腹の小さな命をも傷つける」「『唯一の被爆国』と言う日本政府が、条約に背を向けてどうするのか」と、国に対し異例の訴えを行ない、核兵器禁止条約への署名・批准を求めた。「核のない世界の実現はまだこれから。手放しで喜んでいるわけではない」という被爆者の言葉を重く受け止め、核廃絶へ、さらなる行動が必要だ。(本間千晶)