国が定めた援護対象区域の外側で放射性物質を含む「黒い雨」を浴びた84人の原告が、被爆者健康手帳の交付を求めている、いわゆる「黒い雨」訴訟の控訴審が広島高裁で結審した(2月17日)。原告団事務局長の高東征二さん(80)は、次のように陳述。「ピカッ、ドンの後、家が大揺れ。空が暗くなり雨が降り出した。小学校1、2年のころ手や足のできものが、なかなか治らない。3年生の時に鼠径部や脇の下のリンパ腺が腫れ、3回ほど切開した。区域外で雨に遭った住民が多重がんで次々に亡くなった。提訴から5年目、20年7月29日、全面勝訴判決。ようやく私たちの訴え、内部被曝が認められた。全ての黒い雨被爆者を被爆者と認めほしい」。

 弁護団事務局長の竹森雅奏・弁護士は、国側が控訴審になって黒い雨の健康影響に関する論文など80点以上の大量の証拠を提出したことに触れ、「いずれも原審の集中証拠調べまでの間に提出可能だったものばかり、(中略)訴訟の完結を遅延させることは明らかであり、却下されるべき」と、時機を失した攻撃的防御方法の提出であり、民事訴訟法第157条1項に基づき却下されなければならないとした。

 「今年は、40年以上にわたる『黒い雨』運動の集大成」(原爆黒い雨訴訟を支援する会ニュースno22、21年1月)だ。福島被災者、避難者、原発労働者も、この裁判の行方に注目している。判決は7月14日。広島高裁・西井裁判長は、水俣訴訟で反動判決を出している。気を緩めてはならない。