
阪神淡路や東北大震災と福島原発の大事故に続くコロナ・パンデミックは、人間と人間社会の存続はこの資本主義社会のままで本当に可能なのか、新自由主義・グロ—バリズムは人類の持続的生存を保障するのかという問いを根底から発している。
日本の大企業は内部留保を19年から10兆円増やし、459兆円としている。消費税増税とセットの法人税減税により蓄えられた。また、韓国サンケンの労組つぶし、廃業撤退のようなやり口と非正規雇用の拡大で積み上がったものだ。一方で賃金は減少、自営業者も苦境に直面している。庶民はPCR検査も受けられず、医療の急迫で入院もできない。大災害時もそうであるように、人に手が差しのべられない社会は変えなければならない。
コロナ禍は、かろうじて維持してきた労働者・生活者の基盤を、崖っぷちに追い込んだ。リーマンショックの際、雇用調整助成金の支給金額は09年に6536億円。それに比し、今回は今年1月末の段階で、支給決定額は2兆7658億円に達する。すでに4倍以上だ。4倍の、隠れた失業があるということ。まさに、激変である。コロナから命と暮らしを守るのが21春闘だ。「コロナ解雇・雇い止め」を許さず、労働条件を守りぬき「賃上げ」をかちとろう。
▽ストに立ち上がる
昨年、東京都個人タクシー協同組合で働く女性労働者がパワハラに抗議し組合に入ると、60歳定年後に半額以下の低賃金にされストライキに立ち上がった。過労死レベルの残業を「固定残業」に組み込むジャパンビバレッジ(自販機会社)で働く労働者7名(総合サポートユニオン)は、休憩も取れない状態に残業代を求め一昨年、東京駅でストライキを決行した。
日本郵便で働く非正規雇用労働者(郵政ユニオン)の訴えに、東京高裁は年始勤務手当、住居手当、有給病休への差別不支給を違反とし、支払いを命じた。日本郵便は16万人が非正規雇用で働いており(イオンの次に多い)、その影響は大きい。この前進は、実質的ストライキ勝利ともいえる。
兵庫県下の例を見ると、中小零細の複数分会、運輸倉庫・金属、清掃運、紙工等で低賃金・賃金差別などをめぐり労働委員会闘争を前進させた。組合差別の不当労働行為に対し、ユニオンは労働者の団結権を懸命に守っている。ユニオンの存在と役割は大きい。非正規雇用の格差是正の闘いを支援をしよう。他の地域のユニオンと連携し、ストライキ・実力行動、損賠訴訟などあらゆる手段を駆使し、生きるための21春闘に全力を!
▽時給1500円の要求
これが中心テーマといえる。OECD諸国では20年間の賃金が約1.5倍上がっている。日本の実質賃金は10%近くも下がった。国連ですら「日本の最低賃金は、生存のために必要な最低金額を下回り、先進国の中では最悪の水準」と警告している。アメリカのファストフードで働く労働者は、全米でストライキ・デモを展開し、最低賃金15ドル・1659円(連邦下院が「段階的引き上げ」法案を可決)の確約をとった。韓国では、ろうそく革命の後、最低賃金委員会が16.4%アップを決定した。日本の最低賃金は、東京1013円(時)、大阪964円、兵庫900円、京都909円である。全国平均901円としても、8時間×22日=15万8576円/月。税金や3保険料を払い、月5万円のワンルームを借りれば、残るのは約7万円だ。どうやって生活しろというのか。年収200万円以下の労働者は1139万人にのぼる。
「最低賃金を直ちに時給1500円に!」は、当たり前の要求である。ユニオンの闘いが、生活と権利を防衛する。市民運動、社会運動と連携し「社会的最賃運動」を起こそう。この闘いは、ある種の今日ではベーシックインカムの導入を労働者・地域住民の力でもぎり取るというという意味を持つ。労働組合だけのテーマではない。「社会的」運動という意味はそこにある。21春闘では、これを大きく掲げよう。
▽沖縄、韓国、香港
香港民衆の民主化を求める「雨傘革命」に続き、「逃亡犯条例」に反対するデモは200万人に達した(人口750万人)。韓国の労働者・市民は「国民が主権者」と、パク・クネ政権を倒した。アメリカではコミュニティー・オーガナイジング(共同体の組織化)が広がり、市民団体が労働組合と連携し、地域の労働運動に取り組む。その成果が「最賃15ドル/時間」の実現である。
沖縄県民は辺野古新基地建設に、不屈に抗議行動を続けている。これらに学び、社会を私たちの手に取り戻す新たな社会的労働運動に立ち上がろう。(多田幸造)