辺野古埋め立て土砂を南部激戦地の、まだ遺骨が収集されていない場所から採掘する計画に、県が不許可を出すようにと要請するハンストが行なわれました。

▽魂魄の塔の近くから

 採掘しようとしている地域は、糸満の「魂魄の塔」近く。「東京の碑」「有川中将以下将兵自決の壕」もあります。有川中将は石部隊所属、調べると第62師団(石部隊)の碑文から自害の経緯がわかりました。

 第62師団(石部隊、8300人)は嘉数高台、前田高台などの激戦で多くの死傷者を出し首里に後退します。そこで最後の一戦を交える決意でしたが、司令部の意向で南部へ向かいました。途中、八重洲(やえす)、与座(よざ)岳などに抵抗線を張りながらも敗れ、終焉(しゅうえん)の地を喜屋武岬付近で迎えます。

 6月22日、師団長・藤岡中将は「既に師団の運命尽きたり」と自決。62師団下にあった有川隊も、採掘がおこなわれ、いま中断している場所近くで自決しました。石部隊碑文の最後には、「精鋭を誇った第62師団将兵も遂に摩文仁(まぶに)…北方山野の戦場に、寡兵よく最後の勇を鼓し阿修羅の如く玉砕せり」とあります。

▽土砂に混じる遺骨

 辺野古へ埋める土砂採取は、有川隊将兵自決の壕の近くから62師団が後退しつつ戦った八重洲、与座岳から喜屋武岬にかけた一帯がかなりを占めます。住民の遺骨ばかりではなく、日米将兵の遺骨がまだ散乱している所です。風化した遺骨は、一見しても土砂と見分けがつきません。「表土からは採取しない」と言っても難しいのです。それなのに、政府は業者の言そのまま「注意を払ってやるそうだ」と言っている。「熊野鉱山」社長は和歌山県出身、自民党・二階幹事長と同郷で懇意とか。その二階幹事長が、菅総理を支えています。

▽「人としての問題」

 「採掘届の書類が十分なら、受理しないわけにはいかない」というのが、県庁担当部局の見解です。ハンストは自民党中枢との闘いであり、容易には解決できないでしょう。ハンストを行なった具志堅さんは、「これは右、左、保守、革新の問題ではない、人間としての問題です」と言っています。

 知事は、採掘中止を命じることに伴う圧力を、乗り越えることができるでしょうか。もっともっと県民や全国の市民の後押しがないと、決断できないと思います。それが、危惧であればよいのですが…。(富樫 守)