本日、水戸地方裁判所(前田英子裁判長)は、原告らの訴えを容れ、東海第二原発の運転を差し止めるという判決を言い渡しました。東海第二原発は2011年の福島原発事故で被災した原発の一つであり、また運転開始からすでに 40 年以上を経過した老朽原発です。周辺自治体の多くが、その安全性に疑問を呈し、避難計画の立案が困難であることを理由に再稼働には反対する意見を表明しています。
今日の判決は、原発の安全性について判断する枠組みについて、深層防護の第11 から第5までのレベルのいずれかが欠落し不十分なことが具体的危険であるとしました。
そして第 1 から第 4 までのレベルについては看過しがたい過誤欠落があるとは認められないとしたものの、避難計画などの第5の防護レベルについては、原子力災害重点区域である PAZ、UPZ 内の住民が 94 万人にも及ぶにもかかわらず、実現可能な避難計画、これを実行しうる態勢が整えられているにはほど遠い状態であり、この区域内に居住する原告には人格権侵害の具体的な危険があると判断したものです。
このような判断の背景には、裁判所が具体的な事故の危険性があるという判断が前提となっており、看過しがたい過誤欠落とまでは認められませんでしたが、地震、耐震設計、老朽化、経理的な基礎の欠落、火山、津波、火災、重大事故対策などの多くの論点について原告側が展開した論点についての立証も結果としては活きていると考えます。
福島原発事故から 10 年を経過し、国民の過半数が脱原発を望んでいる状況の下で、また多くの地域住民の再稼働を止めてほしいという切なる願いにこたえたものであり、画期的な司法判断であるといえます。このような判断を下した勇気ある裁判官の皆さんに、心からの敬意を表します。原告らは、被告日本原電に対して、この厳正な司法判断に服し、東海第二原発再稼働の無謀な計画を断念し、控訴をしないように強く求めるものです。
(21年3月18日)