
たたかいの地、川棚(かわたな)町は、長崎県の中央部、長崎空港から大村湾沿いに車で北へ約30分のところにある。のどかな田園風景の中に大きな看板が見える。
「石木ダム建設絶対反対」「水の底より今の故郷」。ここにダム計画が持ち上がったのは1962年。多くの住民が故郷を去ったが、川原(こうばる)集落には今も13世帯、50人以上が立ち退きを拒否して暮らしている。
ダム事業の目的は、佐世保市への水道水確保と川棚町内の洪水防止。しかし、住民側は、利水・治水両方を検証し、「佐世保の水は足りている」「近年の川棚町内の浸水被害は、排水路などの内水氾濫で、ダムでは守れない」と主張する。
佐世保市の最大給水量(日量)は、人口減少などにより20年間で3割減。「将来の需要が急増する」という市の予測には信ぴょう性が薄い。
ダム建設で水没する県道の付け替え工事を再開した2016年7月から始まった、建設現場での抗議の座り込みは1000回を越えた。
川原集落住民の反対運動は、ダム問題を自分の問題と考える支援者に支えられてきた。住民と支援者はともに70歳前後だ。佐世保市から来た支援者(76)は、「ダムの受益者とされる私自身の問題だ」と言う。別の支援者は、「座り込みに示される住民の揺るぎない思いがあるから、県は本体着工できない。住民や県民を納得させる正当性がない」と語る。
長崎県は、測量に機動隊を出動させ、助成金で住民を切り崩す。現在進行形のこのたたかいを、私は帰郷して初めて知った。県内ではニュースになるが、全国的に報道されてきたかは疑問だ。
権力に屈しないたたかいはここにも存在している。それを、みんなに知ってほしい。大義は住民側にあり!(つづく)