テレビをつけると、「日本スゴイ」を連呼する番組がやたらと多いことに違和感を覚えている人には本書をおすすめする。著者は「『日本スゴイ』と自画自賛するだけならまだしも、『笑えるほどたちが悪い韓国』といった嫌韓・嫌中の差別言動言説とワンセット」になっている「さもしい精神」の源流を探り当てるべく、戦前・戦中に刊行された「クダラナイ本」「役に立たない本」「どうでもいい本」を丹念に調べ上げた。そして、最初は「アナクロニズムな人々のたわ言」にすぎなかったものが、敗戦直前には「国家神学の教義」にまで高められていく過程を明らかにしていくのである。そこで描かれるのは、けっして75年前のディストピア(暗黒郷)の物語ではない。(早川タダノリ著/朝日文庫 2019年刊)