神奈川県藤沢市にある介護施設「あおいけあ」。ひとつの敷地内に、グループホーム、小規模多機能型居宅介護事業所、そのサテライト施設2つがある。近くの住民が駅への近道に歩く歩道や、地域の人が通う喫茶店や和食料理屋、子どもの書道教室まである。なんとも魅力的だ。映画『ケアニン〜あなたでよかった〜』のモデルになり好評を博し、ドキュメンタリー映画『僕とケアニンとおばあちゃんたちと。』も制作された。代表の加藤忠相(ただすけ)さんが、『世界が注目する日本の介護 〜あおいけあで見つけたじいちゃん・ばあちゃんとの向き合い方〜』(講談社)という本を出している。お薦めしたい。 

 ここで紹介したいのはスタッフの子育てのこと。こんな介護施設ならでは!と心を打たれた。

 介護士の椎名さん。利用者さんたちが「お祝いしたい」と言ってくれたので、「あおいけあ」で結婚式。利用者とスタッフが全部準備してくれて、親戚や友だちもみんな呼んだ。翌年長女が誕生。加藤社長が、施設のリビングにドーンとベビーベッドを用意してくれたので、生後3カ月で職場復帰。仕事をしていると、おばあちゃんたちがベビーベッドの周りに集まりあやしてくれた。今はその後生まれた1歳の男の子を連れて出勤している。ここは職員がおこなわなければならない決まりごとは何もない。利用者も、職員も「自分のまま」でいられる。

 介護士の斎藤さん。「おもしろい施設がある」と見学に行ったとき、社長に頼んで就職。ところがすぐに妊娠が判明。さすがに辞めようと思ったけど、社長が「みんなで一緒に育てりゃいいじゃん」と。生後2カ月で、子連れでフルタイム復帰した。利用者、スタッフみんなが、わが子(孫)のように可愛がってくれた。利用者は育児の大先輩。自宅での子育てよりずっと楽しく育てられたと思う。

 もともと人間は大家族、地域共同体の中で子育てしてきた。壁に囲われた家の中で、ほぼ一人で24時間赤ちゃんと向き合うなんてどだい無理なのだ。鬱も、虐待もおこるべくしておこっている。職場という空間で、老いも若きも、子どもを見守り、子どもからエネルギーをもらって過ごせるなんて素晴らしい!子も老いも病者も障害者も排除しない、隔離も管理もしない、ともに過ごせる、男も女もLGBTも関わる、そんな共生空間が色んな形であちこちにできたら社会が根っこから変わっていく気がする。