
4月16日 今国会初めての衆院憲法審査会。国民投票法改正案の審議などが行なわれた。自民、立憲は昨年12月、「今国会で何らかの結論を得る」と合意したが、新藤義孝・与党筆頭幹事(自民)が「議論は尽くされた。何らかの結論とは採決を意味する」と述べ、日本維新の会と国民民主も早期採決を求めた。
一方、奥野総一郎委員(立憲)は「何らか結論は、このまま採決を意味しない。CM規制を盛り込むなど、さらに議論の必要がある。急いで憲法の中身に入る必要はない」とし、木村伸子委員(共産)も「政治の最優先課題はコロナ対策。国民投票法や改憲ではない」と述べた。
コロナ禍と憲法に関連し、国重徹委員(公明)が「感染拡大で国会が機能しなくなる恐れも。危機意識を持って議論が必要」とし、馬場伸幸委員(維新)は「(政府が強い権限を行使できる)緊急事態条項を創設する検討は待ったなし」と強調。山尾志桜里委員(国民)も「コロナ禍の今、どのような憲法上の課題が生まれているのか整理する作業を開始するべき」「緊急事態条項が危険なのではない。平時に冷静に議論していない状況が問題だ」とした。
コロナ感染拡大を口実とした憲法議論は、重要な意味を含んでいる。菅政権のコロナ対策は生活・雇用保障なし、罰則ありの飲食店の営業制限で、まともな対策はなきに等しい。オリンピック開催の可否もなし崩しだ。
英国のジョンソン首相は「大規模な感染拡大に至った責任は政府、首相である私にある。亡くなられた方々にお詫びしたい。ロックダウンは国民の自由を制限することになるが、解除は日付ではなく、データ解析に基づいて行なう」旨を述べていた。この違いは何か。
▽国家緊急権は必要ない
緊急事態条項にくわしい永井幸寿・弁護士は、大災害、災害級の事態が起こった場合の「国家緊急権は必要ない」とする。国家緊急権は非常事態に、いわば泥縄式に強権で対処すること。想定していない事態には、いかなる強力な権力をもっても対処できない」「新型の感染症が流行したときどうするのか。新型インフル特措法は災害救助、対策基本法を手本にしている。内閣は国会が機能しないとき、国会に代わって緊急政令を制定できる。憲法の趣旨からすれば、法律によって対処すべき問題だ」と述べている。(『憲法に緊急事態条項は必要か』岩波ブックレット、16年)。
「有権者の利益になる改正(国民投票法)は早期に成立させるべきだ。一方で、資金力の差が表れるCMやネットを使った介入は …… 放置できない。CM規制などの結論を得る時期を決め改正案を成立させるなど、与野党で知恵を絞るべき」という論説(佐賀新聞、4月16日)があったが、本末転倒であろう。国民投票法を使わせないとこそが肝要だ。憲法審査会は木曜が定例。次回は5月6日が予定されている。
▽昨年の武器防護25件
安保関連法で自衛隊の任務となった「他国の艦艇や航空機を守る、武器等防護(武力行使に至らないグレーゾーンで自衛隊が、日本の防衛にかかわる行動に当たる他国軍を守る)」が、昨年1年間で過去最多の25件となった。弾道ミサイル警戒監視に当たる艦艇4件、自衛隊と共同訓練した航空機21件。いずれも米軍。安保法直後の16年は0件、17年5月、海自護衛艦「いずも」他が米補給艦に同行したのが初、同年は2件。18年16件、19年14件。すべて米軍が対象(防衛省発表)。
今年、ある5・3憲法集会フライヤー見出しに、「憲法は、あなたの命と未来のサポーター」とあった。(松浦)