本書の内容を要約すると。ヨーロッパでの労働組合は、中世市民社会のギルドをルーツに、職業別労働組合(クラフトユニオン)に進化して労働者階級の階級意識の形成が始まった。産業革命によって大量の不熟練工が生み出される中、産業別労組が職業別労組に取って替わっていく。

 米国では、最初に熟練工と自営農民となった北西欧の移民が流入。南東欧から流入した第2次移民が大量の不熟練工を形成した。それは職業別労組・アメリカ労働総同盟(AFL)から産業別労働組合(CIO)、さらには「ワンビックユニオン」をめざしたIWWの結成に向かった。企業側はアンチ・ユニオニズムの強硬な攻撃に訴えつつ、カンパニー・ユニオン(従業員組織)を作り、会社内に封じ込めていった。ニューディール下で1935年ワーグナー法が成立、産業別労組が再生していくが、ヨーロッパのような産業別労働協約体制は築けなかった。

 日本の場合、高揚する労働組合運動を個別企業内に抑え込む土台となったのが、欧米にはなかった企業内技能養成制度と、それに基づく年功賃金であった。ここに「年功賃金と企業内労組」の原型が形成されていった。46年に163万人で結成された産別会議は共産党の政治主義もあって瓦解、50年には企業内組合をまとめた総評に席を譲る。しかし総評は、労働者間競争を規制する方法論や制度論が欠落しており、60年までに民間大企業が第二組合の結成で、官公労の運動も75年スト権ストの敗北を最後に停滞へと向かった。

 バブル崩壊以降は、膨大な非(弱)年功賃金労働者と非正規労働者が生まれてた。日本は、今、企業内労組ではないユニオニズムの創造、労働市場への規制力を持つ本当の労働組合の形成をめざすべきときだ。変化は必然だが、組織主体の意識性が不可欠だ。

▼呼びかけに応えて

 本書が呼びかけるように、自覚的意思で結ばれた活動家集団によって、「ワンビックユニオン」をめざして、膨大な非年功賃金労働者と非正規労働者を産業別労組に組織し労働組合を再興していきたい。歴史的なストライキはどれも単なる労働の放棄・同盟罷業ではなかった。ピケッティングのないストライキはない。労働組合の団体行動権を守り抜こう。

 ヨーロッパに産業別労組が確立する過程は、歴史的には欧米列強による帝国主義の世界支配が成立していく過程であった。米国では第一次世界大戦に反対したIWWに弾圧が襲いかかり、ニューディール政策では大恐慌から脱出できずに第二次世界大戦へと向かった。日本の産別会議は朝鮮戦争に先立つレッド・パージで壊滅させられた。現在、膨大な非正規労働者が生み出さていれる世界は、同時に世界支配のパワーシフトの進行する時代でもある。帝国主義の世界支配と労働運動の関係は、もうひとつの重大なテーマだと思う。

(愛知連帯ユニオン佐藤隆)