▼祝祭的な戦術

 オークランド(カルフォルニア州)で一番大きなマクドナルドをチャイルドケア(保育園)の労働者らが占拠して声をあげた。スペイン語と英語の両方で訴えている。その場をまとめたのは、SEIU(国際サービス労働者組合)だ。レストラン、ホテル、ファーストフード、それから医療・介護・福祉などの労働者を組織している。彼らの多くは、最低賃金に直接かかわる労働者たちだ。なぜ道路を占拠しているのか。職場では少数で排他的交渉権がなく、団体交渉ができない。だから小さな運動を散発的にやるのではなく、勢力を結集させて大きな騒ぎを起こす。そしてマスコミを利用する。ディスラプト(混乱)戦術だ。

 もちろんこれは法律には違反している。営業中のマクドに入っているわけだから。だから、テキサスとか共和党の強い州だったら逮捕される。カルフォルニア州は民主党が強いのでこんな感じでできている。

 終わったら、先ほどマクドに突撃していた人たちが、子どもを連れて「マックシェイクを1つ」とか注文しているという普段の光景に戻っている。このように、街頭で出て、非常に派手で祝祭的なやり方で宣伝していくという組合運動が発達してきた。ないし厳しい状況下で、発達せざるを得なかった。

 もっとも、こういう運動をどう評価するかという点では意見が別れるところだ。

▼15ドルの戦い

 バイデン政権が、連邦最低賃金を2倍の15ドルに引き上げる検討に入っている。最低賃金15ドルが実現しつつある。もっとも、最賃15ドルは、アメリカでは全然おかしくない。

 なぜなら家賃がとんでもなく高い。例えば、サン・フランシスコで、1LDKの家賃が3500ドル(約35万円)、ニューヨークで3100ドル(約31万円)。なぜこんなに高いのか。成功したIT長者が、ポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)で、株だけでなく不動産にも投資しているから。最賃15ドルでは、1LDKにも住めない。

 今一つは学費が高い。ニューヨーク州立大で、州住民が年間7980ドル(約80万円)、州外の住民は年間1万7830ドル(180万円)。私立のスタンフォード大だと4万7331ドル(約470万円)アメリカの学生は大学を出た瞬間、巨額の借金を抱えている。だから、バニー・サンダースの「公立大の学費の無料化」という公約が若者の支持を受ける。

 あとは、医療保険がひどい。私の実体験だが、歯医者で虫歯2本治療したら10万円。アメリカでは「歯医者の前で口を開けたら車が買える」という。子どもがインフルエンザの予防接種を受けたら1万円。正確には1・7万円で自己負担が1万円。家族3人で保険料が18万円ということもあった。そういう世界なので、最賃15ドルなんて全然多くはない。当たり前の要求だ。(つづく)