「コロナ禍はワクチンさえ普及すれば解決」「菅政権の問題はワクチンの出遅れ」という論調が急速に高まってきた。今や専門家の慎重論は後退し、副反応の報道も影を潜めている。変異株拡大、医療崩壊、医療・介護現場での大規模クラスター、同従事者のコロナ感染や自宅死の増加などが現実となるなか、官民・メディアをあげてワクチン待望論を喧伝している。空気が一変した。

 「医療だけでなく介護ヘルパーにも優先接種を」などの要望も出てきた。副反応を懸念していた人にも、ワクチンにすがる気持ちが生まれている。無理もない。しかし、だからこそ、あらためて「本当にワクチンは切札なのか」「感染拡大の根本問題はなにか」をともに考えていきたい。

 引き続き、天笠啓祐さん(環境問題ジャーナリスト)の提起を紹介する。

▼免疫システム

  ウイルスや細菌により引き起こされる感染症への対策として開発されてきたワクチンは、ジェンナーの天然痘ウイルスからはじまる。細菌による感染症へのワクチンは炭疽菌から。コッホが細菌培養し、パスツールがワクチンをつくった。

 ワクチンは感染症を減らし、多くの人びとを救ってきた。ワクチンそのものを否定することは問題だ。問題なのはそのあり方だ。

 細菌による感染症は抗生物質の開発により治療が可能となったが、ウイルスには効かない。ウイルスは人間の細胞内に入りDNAの働きを利用して増殖するため、ウイルスを殺すことは細胞を殺すことになり、ウイルスを殺す薬はつくれない。

 そこで免疫システムである抗原抗体反応を利用したワクチンによる対策が進められてきた。しかし人間の免疫はいろんなものがかかわる複雑なシステムだ。単純な抗原抗体反応だけではない。抗体が3種類あることもわかってきた。

 ワクチンは、この免疫システムに介入するためさまざまな問題を引き起こす。さらに免疫系は自律神経系、内分泌系と相互依存の関係にあり、免疫系の撹乱はすべての撹乱につながる。

▼ウイルスの役割

  新型コロナ感染症は、病める現代社会がつくりだした。除菌・抗菌を追いもとめる「清潔社会」、ワクチンや抗菌グッズの開発にまい進してきた社会は人間の抵抗力をうばい、感染症をひろげる基盤をつくってきた。

 人間のDNAの半分はウイルス由来といわれる。生殖による遺伝だけでなくウイルスが人間に入り込み(感染)、環境に応じた変化をもたらし、人間は進化してきた。腸内には百兆個の細菌が常在し免疫の要をなしている。つまりウイルスや微生物敵視政策は人間じしんを攻撃することなのだ。

  さらに国は80年代以降、感染症に対応する公衆衛生を切りすて、経済効果をうむ生活習慣病やガンへとシフトしてきた。1989年全国に848カ所あった保健所は2018年には469カ所に。今回まったく対応できなかった。医療・介護崩壊も切りすて政策の結果だ。感染拡大は失業や貧困、DVなど社会的弱者に打撃をあたえ、感染症で影響をうける人をふやしている。ハンセン病予防法以来の差別と排除も受けつがれている。こうしたことを解決する政策が必要なのに、それをせずにワクチン、ワクチンと走るのは本末転倒だ。

▼ワクチンの歴史

 天笠さんは新型コロナワクチンについて、「今までのワクチンとは全く異なるものだ」という。

 最初につくられたワクチンは、ウイルスそのものを弱毒化したもの。ところがウイルスが必ず一定の割合で先祖がえりして強毒化する。「悪魔の選択」といわれ、今はほとんどつくられていない。

 次に登場したのが不活化ワクチン。死んだウイルスでつくられ、副反応も弱いが効果も低いので複数回接種が必要となる。乳幼児を痛めつけている過密なワクチンスケジュールはそのためだ。

 さらにワクチンを接種部位に長くとどめておくための免疫反応増強剤(アジュバンド)が身体に大きな負担をかける。アジュバンドの多くはアルミ化合物が使われ、組織を破壊し、疼痛や腫脹、アレルギーや自己免疫疾患を引き起こす。10代の女性たちを激しい副反応、や有害事象で苦しめた子宮頸癌ワクチンが典型例だ(未解決)。 

 さらに遺伝子組み換え技術でつくるワクチンができる。「遺伝子組み換え技術」とは、ある生物種に、種の壁を越えて他の生物種の遺伝子を導入して生命を改造する技術だ。11年、米国の研究チームはネコの遺伝子にクラゲの遺伝子を組み込み、「緑色に光るネコ」をつくり出した。こうした技術が生命環境に与える影響が未知であるため、環境影響評価や安全性などにかんする規制が国際的にもうけられてきた。

 遺伝子組み換えワクチンは、昆虫などの細胞を使って、ウイルスの外皮蛋白を集積しアジュバンドを加えてつくる。

 以上は、いずれも人工的につくった抗原(ワクチン)そのものを接種して、免疫システムである抗原抗体反応に働きかけ、体内に抗体をつくり出して発症や重症化を抑えるというものだ。

▼人間の遺伝子を操作

 それでは、mRNAワクチン(ファイザー製・モデルナ製)やウイルスベクター・ワクチン(アストラゼネカ製)などの新型コロナワクチンとはどのようなものか。それは従来のワクチンとはまったくちがい、人工合成した遺伝物質を筋肉注射で体内に入れ、人間の細胞内で抗原(ワクチン)を作らせるというものだ。

 天笠さんは「これは人間の遺伝子操作に他ならない」という。遺伝物質が生殖細胞に移行すれば、遺伝子改造につながりかねない。遺伝子操作には様々な規制がもうけられてきたのに、なぜこのワクチンが問題とならないのか。さらに、この方法により開発期間は圧倒的に短縮され、量産が可能になった。本来の基礎研究、動物実験、臨床試験という段階を踏まず、「緊急」を理由に例外的に全部同時におこなえる仕組みがつくられてしまった(昨年5月厚労省による)。今後、医薬品やワクチン開発でこれが常態化する危険性がある。

(つづく)