5月18日、政府・与党は今国会で成立をもくろんだ「入管法改悪案」を取り下げ、事実上廃案となった。4月中旬から1カ月にわたる国会前シットイン、各地の緊急行動、国内外の専門家の声明、アーティストらのSNSなどを使った抗議デモなど、反対の声が力となって実現した勝利だ。

 国会での強行採決があるかもと緊迫する5月16日、3月に名古屋入管収容所で当局の恣意的とも思われる医療放置によって亡くなったスリランカ人ウィシュマ・サンダマリさんの葬儀が名古屋市内でおこなわれた。それに合わせて、東京や大阪など各地で抗議行動が取り組まれた。

▽異様、冷酷な入管行政

 大阪では若手弁護士3人のよびかけた集会とデモに300人が参加した。集会は、ウィシュマさんに黙祷を捧げたのあと10人ほとが発言。発言者はいずれも入管収容所の待遇改善、仮釈放のための活動、外国人労働者の権利回復、難民認定を求める人びとへの支援などに取り組んできた人たちだ。そのキャリアも最近始めた人から数十年続けてきた人までさまざまだが、ほとんどが女性だった。

 口々に入管行政の異様ともいえる冷酷さ、司法が容認・加担し、それに無関心な市民が多いことなどを実感を込めて報。これ以上の人権侵害を許してはならない、今回の改悪は絶対阻止しなければと語った。

▽こんな日本でいいのか

 在日朝鮮人2世の男性は「戦後、入管行政の高官が『外国人は煮て食おうと焼いて食おうと自由』と言った。日本は戦前の植民地の精算をしないままに国籍で線を引き(※注)、外国人は敵(犯罪予備軍)とみなしてきた。だから私たちの祖父母の世代は大勢が大村収容所に放り込まれた。21世紀の今もその本音は変わっていない。こんな日本でいいのか」と問いかけた。

 大阪入管の抗議行動に通っているという在日のジャーナリストの李信恵(イシネ)さんは「中から『ありがとう』とという声や手を振る姿が見える。あるときは、『ウィ・アー・ザ・ワールド』の歌声が聞こえた。この歌の出だしは『今こそ呼ぶ声を聞くとき』。彼らの声を聞き、歴史を学び、人間が共に尊重される社会をつくろう」と訴えた。

▽人間的であるために

 「姉の死の真相を知りたい」と来日したウィシュマさんの妹2人は、。名古屋入管局長に面会を求め、真相解明のためカメラ映像の公開を強く求めた。所長は「私どもは調査されている立場なので何も言えない。(映像は)「保安上の観点から開示できない」とその求めを拒んだ。彼女たちは「真相を解明するまで帰国できない」とビザを90日間延長した(TBS報道特集)。 

 ウィシュマさんの死が示しているのは、外国人の出入国管理をめぐる問題が単なる政治的な課題ではないということだ。ウィシュマさんの死の真相を解明することは、外国人を人間として認めない日本の入管体制の根本問題に迫ることである。私たちが人間的であろうとするならば、そこからけっして目をそらしてはならない。(新田)

(※注)敗戦時、日本に在住する朝鮮人は210万人。日本の植民地支配によって強制的に日本人とされた朝鮮人は、1947年5月2日に施行された外国人登録令によって一方的に外国人とされ、翌日施行された日本国憲法から排除された。