
伊藤大一さんの講演を聞いた。アメリカ労働運動の新潮流=社会運動的労働運動(SMU)、その戦術としての直接行動主義、「Fight for $15」運動など重要な取り組みが紹介された。
鳥井一平さん(移住連・代表理事)の『国家と移民 外国人労働者と日本の未来』(集英社新書2020年6月刊)を読んだが、それと合わせて、日本の労働運動に欠けている問題について、少し意見を述べたい。結論は「外国人労働者との連帯」ということだ。
社会的労働運動は、労働組合の目的を、組織維持ではなく、「社会正義の実現」、そのための組織拡大を目的とした運動である。組織化の対象を、従来かえりみられなかった女性、マイノリティ、低賃金労働者などへ拡大した。そのために、企業だけでなく、NGO、地域コミュニティ、宗教コミュニティとの連帯が提起されている。
鳥井さんによれば、アメリカの労働組合(AFL−CIO)は「移民パワーをどう組織化するか」を考え活性化・成功しているという。
日本社会も、「多民族・多文化共生社会」だ。戦前・戦後をとおして、移民労働者によって支えられている。移民問題というのは労働問題であり、人権問題だ。しかし、日本の労働組合は、正面から課題として取り組んでこなかった。たとえば、「技能実習制度を廃止すべきだ」ということを一度も言ったことはない。外国人労働者を排除する側に位置し、「外国人労働者に雇用を奪われる」という立場に立ってきた。外国人労働者は、モノ扱いされるケースが多く、資本による「使い捨て」が横行している。私たちの社会が、気がつかないうちに、じわじわと腐ってきている。それが労働者の倫理観や労働基準、人権感覚を壊し、さらには社会そのものを壊していると思う。
労働者としての経験からいえば、職場における性・国籍・地域、正規・非正規雇用、学歴など、さまざまな格差・区別・差別が横行している。そして、職場と居住地域との関係が「統一」されていない。職場では労働組合で社会党を支持し、地域では自民党を応援する。
「左翼政党が軸になって労働者を組織する」「組織を維持するために活動する」という在り方を根本的見直す必要がある。社会的労働運動と、それを実践している連帯ユニオン関生支部のたたかいを守り発展させていくことが重要だと感じた。(おわり)