
自衛隊基地や原子力発電所の周辺、国境離島などの土地の利用を規制する法律(土地規制法)が16日午前2時、参議院本会議で可決成立した。衆議院での審議はたったの12時間だった。
14日の参院内閣委員会の参考人質疑では3人の参考人全員が条文のあいまいさを指摘した。しかし政府はこうした懸念にいっさい答えなかった。そして数の力で強行成立させた。賛成は自民、公明、維新、国民。
15日午後、参議院会館前では抗議行動がおこなわれた。「#土地規制法案を廃案に」のツイートデモは16日午前3時42分時点で、15万件を突破していた。
▼監視される住民
防衛相が明らかにした区域指定の候補リスト(【表】参照)によれば、自衛隊基地の周囲1キロ圏内の住民などを監視対象とする「注視区域」が四百数十カ所。一定規模の土地の所有権移転に事前届け出を義務付ける「特別注視区域」が百数十カ所。これから政令で定める「生活関連施設」には原子力関係施設、自衛隊が共用する空港などが含まれる。将来的にその対象が拡大する可能性が高い。
このように「土地規制法」は、基地反対運動、原発反対運動を直接規制し、監視するために利用することができる。また土地の所有者や利用者がどんな人物か、収集される情報は名前や住所、国籍、土地の利用状況にとどまらず思想・信条や所属団体、交友関係、海外渡航歴など際限なく広がる恐れがある。
▼恣意的運用、重い刑罰
重要施設の「機能を阻害する行為」とは何かが極めてあいまいだ。「機能を阻害する行為に供する明らかなおそれ」については、何を「おそれ」とするのかはっきりしていない。当局による恣意的運用が可能だ。
また「注視区域」の土地利用者らが、政府の求める当該土地等の利用に関し、報告または資料の提出を拒否した場合、30万円以下の罰金となる。求められる報告や資料にかんする制限はない。
内閣総理大臣が、「機能を阻害する行為」、または、「機能を阻害する行為に供する明らかなおそれ」があると認めた場合、勧告および命令により、当該土地等の利用を制限することができる。命令、勧告にそむくと2年以下の懲役、200万円以下の罰金である。
▼法の先取りか
6月4日午前、沖縄では、米軍北部訓練場のメインゲート前に米軍の廃棄物を置いたとして、チョウ類研究者の宮城秋乃さんの自宅が家宅捜索された。問題の廃棄物は、米軍兵士が森などに無断で投棄していたもの。宮城さんは何度もやめるように米軍に訴えていたが、止めないため、廃棄物を拾い集めてゲート前に置いたのである。土地規制法の成立によって、今後、同様の弾圧が基地、原発周辺など日本各地で起こることが危惧される。(池内慶子)