6月閉会の国会で、入管法改悪を止めることができた。在日外国人、移民の問題にくわしく、日本での滞在や労働条件の支援にとりくむ鳥井一平さんの講演があった(5月)。その内容にもとづき寄稿してもらった。鳥井さんは、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)代表理事、著書の『国家と移民』(集英社新書)がある。(4回連載)

オールドカマーとニューカマー

 日本における外国人という場合、オールドカマーとニューカマーに区分されて考えられる。前者は旧植民地出身者とその子孫。後者は80年代以降(政府は90年代以降とする)に日本に移住した人たち。ここで踏まえていただきたいのは「外国人」と言う呼び方にも差別的構造が隠されていることです。

 これからお話しするのはとくにニューカマーの人たちを中心にしています。日本の外国人登録者数・在留外国人数(20年12月)は288万7116人、日本の人口の2・23%を占める。国籍別では中国77万8112人27%、ベトナム44万8053人16%、韓国42万6908人15%(朝鮮籍は含まない)、フィリピン27万9660人10%、ブラジル20万8538人7%ほかとなっている。

 外国人労働者は在留資格によってわけられるが、日本には就労ビザ、労働ビザはない。コックさんとして日本にきたが、レストランがヒマだからと建設現場で働くことはできない。「不法就労」、資格外就労になる。いまコロナ禍のもと一部認めるところがあるが、制度はそうなっていない。どんな職種でも働けるのは、日系労働者(おもにブラジル、ペルー)、配偶者、永住、つまり身分に基づく在留資格者がある。別のカテゴリー、技能実習生は後述する。

労働法から排除

 「労働者ではない」研修生、家事労働者らには労働法が適用されない。家事労働者については日本がILO条約を批准していないからだ。そして興業。これは悪名高い。ダンサー、エンターテイナーとして連れてこられ、実際は風俗業、性産業で働かせる。現在は減ってきているが、一定数存在する。「給料を払ってもらえない」と、ホステスさんが労基署に訴えて、労基法が適用されても「不法就労」、入管法違反になる。

 難民、難民申請中の人。去年、難民と認定されたのは44人、他の先進国に比べて三桁少ない。政府は、国際的な批判を受けるなか「難民申請中」ということを考え出した。難民申請して6カ月立つと、特定活動の在留資格を与え「風俗業と経営管理以外は働いてもいい」と利用し、オリ、パラの建設現場などで働かせた。また留学生が労働者のカテゴリーに入っている。そういう在り方自体おかしい。特定技能1号2号が始まっているが、いまは1号だけ。建設・造船就労者が15年4月から始まっている。介護、そして家事支援労働者が派遣労働者として労働法が適用されることにはなっている。

労働人口、100人に3人が外国人

 厚生労働省のデータ(毎年10月)によると、外国人労働者は172万4328人。同時期の総務省統計局の雇用者数は5465万人なので、、3・05%となる。

非正規滞在者数は、直近で8万2868人(今年1月)となっている。93年がピークで29万8千人、このあと減ってくる。バブル景気がはじけ、帰国させた。日系労働者は07年がピーク、37万人。リーマンショックで減ってきた。その後、政府は増やさないという政策を進めてきた。

 私たちは、93年3月に「外国人春闘」を始めた。1日行動でオーバースティの労働者が捕まることはない。警察官が、「どうしたの」と尋ねるとすると、「給料を払ってもらえない」というと、「穏便にやってね」ということになる。外国人労働者は、いまの日本社会を支えている。外国人労働者組合員自身が、解雇や労災の相談、支援を始めた。その時から省庁交渉を毎年続け、28回になる。私は2017年に移住連の代表理事になり、全統一労働組合の書記長を長くやっていた。ただ、代表理事や書記長と名乗るより「オルグ」と自称している。また、「炎のオルグ」とも呼ばれている。93年12月、未払い賃金の支払い交渉が決裂し、裁判所の執行官と差し押さえに行った。社長がガソリンを買ってきて火をつけ、私は下半身に大火傷を負った。「本当に燃えちゃったオルグ」「懲りないオルグ」とも呼ばれているがこれで外国人労働者の信頼を得るようになったとも言える。

 100の相談に100の物語、一つ一つに物語がある。悲しいこと、苦しいこと、楽しいこと、教えてもらうことなど。90年からイスラム教の人たちやアフリカの人、中東、アジアの各地の人、いろいろな国の人とふれあい、話を聞いている。交渉相手である社長さんのなかにも立派な人、差別なく接する人がいる。しかし、そういう労働問題がなぜ起きるのか。日本の場当たり的な受け入れ政策に大きな原因がある。(つづく)