市東さんの農地の強制収用を容認した最高裁決定は、農民が命とし生きがいとする農地よりも、空港の価値が高いとするものだ。しかし農民は自然と環境に向き合い、呼吸しながら営農に励み、命の源を育んでいる。農民から農地・耕作地を奪い、農に生きる権利を奪う政治を直ちにやめさせねばならない。

▼旅客数は9割減

 コロナ禍のなか、成田空港の航空機発着は激減している。国際線・国内線の便数は前年比6割減の10万6千回。旅客数は9割減。空港内の店舗の大半が休業・撤退。成田空港会社(NAA)は3月期決算で714億円の赤字を計上した。民営化後初の大赤字だ。今年度も670億円の赤字を見込んでおり、「回復は23年度以降」としている。

 それでもNAAは第3滑走路建設など空港機能強化計画(28年度完成予定)の中断・延期・中止の検討さえしないという。周辺自治体への対策交付金を昨年比1・6倍の71億円に増額し、「空港依存」へのつなぎ止めに必死である。

 航空業界は、全日空、日本航空はじめ大赤字を抱え、出向、希望退職、給与・ボーナスカット、機体売却に至るまで、ありとあらゆる方策を講じている。そのため空港とその関連業界で働く人びとは、こうした困難極める労働・職場環境のなかに追いやられている。そんな中で、「親方日の丸」よろしく振舞っているのがNAAだ。

 国とNAAは、観光バブルを煽り、航空需要を倍々ゲームのように作り出してきた。そのバブルがすでに弾けているという現実を、立ち止まって見直す勇気も気概もない。 そして成田空港はいま、「世界の玄関口」ではなく、「コロナ禍拡散の玄関口」となり、東京オリンピックでは文字通りそうなっている。空港管理もまともにおこなえない政府やNAAに空港拡張や機能強化を云々する資格はない。(野里豊)