移民と日本、移住者の労働問題などにくわしい鳥井一平さんの講演を取材し、了解を得て掲載しました。(取材、文責/高崎庄二)

 93年に技能実習制度が開始された。もともと「研修」という制度は「留学」の枝分かれの在留資格として存在したが、90年に「研修」という在留資格を技能実習制度を始めるために独立させ、新設した。建前は「開発途上国における人材育成のための研修」。「修得しようとする技術・技能等が同一作業の反復(単純作業)のみによって修得できるものではないもの」に限定し「研修」させるというウソで塗り固め、実際は労働者として働かせた。

 この技能実習制度は、来日後1年間、研修生として「研修」し、その後、技能検定試験を受ける。合格すると技能実習生となり、さらに1年間日本に滞在し「技能実習」ができるようになる。最初の研修期間中も「研修」という名目で労働させられるが、その間は労働法すら適用されない。ケガをしても労災が受けられない。初めは限られた職種だけだったが、98年から農業も認められるようになった。1年間の研修後に受ける技能試験では、事前に答えを教えてくれ100%合格していた。「技能実習をさせるための試験」に過ぎなかったから。

例えば茨城にあった大企業の自販機製造では、インドネシアから板金と塗装の職種で来た人が、ある者は研修の間、塗装作業しかやらないのに、試験は板金の試験を受けその後も2年間塗装作業をしていて、終了証書は板金になる。逆もある。建設現場で職種が型枠なのに、3年間、型枠に触ったこともない。そんなことが当たり前のように起こっている。検定試験では、権利を主張する研修生、(今は技能実習生)には答えを教えず不合格にし、帰国させる理由づくりにしている。

相次ぐ人権侵害、奴隷労働。びっくりするような言葉だが、それを指摘したのが07年アメリカ国務省の人身売買年次報告書。「日本の技能実習制度は人身売買、奴隷制度ではないか」と示唆した。07年から20年版まで毎年指摘されている。国連の人権機関からも08年から勧告を受けている。とくに14年には厳しい勧告が出た。「知らぬは日本人ばかり」ということではないか。

▽ピンハネが当たり前

政府は、技能実習生の支給予定賃金しか調査しておらず実態調査をしていない。岐阜県のある縫製業者の場合、給料明細書には、時給300円、労働時間欄には230時間とあり、6万9千円と書いてある。これは「残業時間」。そこに書かれていない法定労働時間が1カ月174時間あり、1カ月で合計400時間を超え働かされていた。毎日、夜の10時まで土、日も働かないと、そうならない。給与明細には「まとめ」がある。縫製業では内職仕事を「まとめ」と言う。寮に帰ってから1個10銭とか20銭の仕事をやる。それを合わせると7万6232円、これが残業代。これには基本給が書かれていない。控除額の欄に食費1万5千円となっており、引かれずに足され、差引支給額9万1232円となる。意味不明、岐阜に行き、彼女らの話を聞き、ようやくわかった。「食費1万5千円」と書かれているのが、実は基本給だった。

 正確に言うと、この給料支払明細書には書かれていないが、毎月「強制貯金」が3万5千円引かれていたから、合計5万円が基本給となる。しかし、5万円では政府の発表している賃金データの額に全然足りない。この人の雇用契約書では、月額12万5千円となっていた。12万5千円と5万円の差額7万5千円は、ピンハネされている。

 茨城県の地方都市のある会社の賃金台帳では、基本賃金と残業代などで合計18万円くらいになっているが、布団リース代が1カ月6千円、家賃として5万5千円引かれている。しかも3人部屋なのに、1人5万5千円が徴収されている。他にもリース、リースで引かれている。会社の理事長に「どこのリース会社からリースしているのか」尋ねると、「私がリースしている」と言う。とんでもない。

愛知県豊田市にある某大手自動車メーカーの構内孫請け会社では、研修生・実習生たちのトイレの使用回数と使用時間をチェックしていた。何分トイレに行ったか記録し、1分につき15円の罰金を取っていた。2段ベッドのカイコ棚で生活させている。(つづく)

〔移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)代表理事。著書『国家と移民』(集英社新書)など〕