米韓軍事演習が10日から始まった。今後16日か26日までの予定で本演習が予定されている。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は演習の中止を強く求めており、緊迫が続いている。韓国・文在寅政権がかかげる「朝鮮半島平和プロセス」の行方はどうなるのか。在日韓国研究所代表の金光男さんが、現状を分析する講演をおこなった(7月31日、滋賀県大津市内)。主催は戦争をさせない1000人委員会・しが。以下は講演要旨。(多賀)

▽文在寅への高い支持率

 日本のマスコミは、文在寅大統領が韓国でまったく支持されてないように報道しているがまったくのデタラメだ。韓国の大統領の任期は5年で再選はない。そのため5年目の現職大統領の支持率は20%台になるのが普通だ。ところが文在寅の支持率は40%。これは異例の高さである。日本のマスコミはあまりにひどい。

 韓国の大統領選は来年3月に実施される。候補者が決まるのはこの11月だ。つまり、11月までに文在寅大統領の「朝鮮半島平和プロセス」がどこまで進むかがいまの政治的な焦点になっている。

▽文大統領の「苦渋」

 南北の軍事対立は、1953年の休戦協定以降も、68年間続いている。韓国軍は休戦協定の署名に加わってない。当時の李承晩大統領が、作戦統帥権を国連軍司令官に委譲したためだ。作戦統帥権は、1978年に、韓米連合司令部に移管されたが、司令官は米軍だった。1994年に平時の作戦統帥権が韓国側に移管したが、戦時は依然として米軍だ。現在を米軍は、これを韓国に移管できるかどうかを検討している最中である。

 2018年以降は、コンピューターを使った指揮所演習に転換するなど規模を縮小してきた。だが、韓国が戦時を含めた統帥権を完全に掌握するためには合同演習そのものを拒否することができない。もし拒否すれば、米軍は統帥権の移管をを認めない。文在寅個人としては合同演習をやりたくない。苦渋の選択として受け入れざるえないのだ。朝鮮はその「苦渋」を思いやるべきだろう。

▽バイデンの朝鮮政策

 米バイデン政権は、4月30日、「われわれの北朝鮮政策は、一括妥結に焦点を置かず、戦略的忍耐に依存することでもない」と表明。トランプ政権ともオバマ政権とも違うという意味だ。

 5月21日の文在寅・バイデン会談で、「われわれは2018年の板門店宣言とシンガポール共同声明など既存の南北・朝米合意に基づいた外交と対話が、朝鮮半島の完全な非核化と恒久的な平和を成し遂げるために欠かせないという共同の信頼を再確認した」と、共同声明を出した。

 また、バイデンは北朝鮮政策特別代表にソン・キム駐インドネシア米大使を任命した。彼は、金大中拉致事件を指揮したキム・ジェゴンの息子。中学までソウルにいたので朝鮮通。こうしたなかで、南北の直通連絡線が7月27日に全面復元した。

 日本政府は、朝鮮半島平和プロセスに協力すべきである。それを妨害する軍事力増強路線をとるべきではない。