9月1日に創設される予定のデジタル庁。政府が進めるデジタル改革のねらいは何か。その危険性について、今月6日、自治体情報政策研究所代表の黒田充さんが講演した。主催は戦争あかん!ロックアクション。以下、印象に残った点をまとめてみた。(池内慶子)

▼プロファイリング

 私たちは常に個人情報をばらまきながら生活している。買い物や病院の診察結果、SNSへの投稿など。その個人情報を名寄せして、対象者の人物像をコンピューター上に作りだすことをプロファイリングという。企業はプロファイリングによって選別された層に働き掛けを行い、効率的に利益を得たり、リスクを回避したりできる。

 私たちが享受しているサービスは、監視によって実現されている。例えばクレジットカードやポイントカード(購買情報)、ICカード乗車券やETCカード(移動情報)、インターネット(検索履歴やメールの情報)、携帯電話(位置情報)など。

 これらの集められた個人情報が、一つのサービスや企業、自治体、国家の枠を越え、より大きな利益を求める大企業とそれに奉仕する政府によって、プロファイリングされ、知らないうちに合法的に利用されている。 

 プロファイリングの効率化には、個人情報が誰のものかを示すIDが必要だが、確実な個人情報を持っているのは地方自治体だ。マイナンバーとも紐付されている。しかしデータの形式が自治体によってバラバラなので標準化が必要だ。そこで成立させたのが、データの標準化や個人情報保護条例「改正」などを盛り込んだデジタル改革関連法である。

▼地方自治の形骸化

 標準化法は、自治体の17の業務(住民基本台帳、固定資産税、国民健康保険など)の情報システムの標準化・共同化を図るものである。

 自治体は、国が整備するガバメントクラウドに載せられた標準システム(アプリケーション)を利用する(2025年度に移行完了)。アプリケーションは国が策定した標準に基づいて複数のIT企業が作成。カスタマイズはできず、自治体に残された自由はアプリケーションを選ぶことだけだ。

 自治体の独自施策(減免や上積み給付、適用範囲の拡大等)が困難になり、地方自治の形骸化をもたらす。

▼デジタル庁の権力

 デジタル庁の長は内閣総理大臣。別に「デジタル大臣」と「デジタル監」を置き、デジタル社会の形成に関する重点計画、官民データ活用推進計画の作成や企画立案を行う。デジタル大臣は関係行政機関の長への勧告権を持つ。強力な総合調整機能を有し、国の情報システム予算を一括計上し、各府省に配分する。政府全体の情報システムを一元的に管理する。

 マイナンバー制度、公的個人認証制度の所管が総務省や内閣府からデジタル庁に移る。J−LIS(地方公共団体情報システム機構)の主務大臣を総務大臣から「内閣総理大臣+総務大臣」へと変更。主務大臣は定款の変更や理事長・監事の任命等に対する認可権などを持つ。デジタル庁は全ての省庁の上に君臨、支配する強大な権力を持つ組織となる。

▼「監視」から守るには

 個人情報を提供することになる自治体だが、だからこそ、政府が進めるデジタル化を押しとどめるという点で大きな役割を果たすことができる。そのために、私たちは「デジタル化」に関心を持ち、政府の施策や大企業の思惑を正しく知り、何が問題なのかを理解しなければならない。自治体や地域レベルでのデジタル化の実態を具体的につかまなければならない。EU並みのプロファイリング規制や欧米のような顔認識技術の規制を求める運動も必要だ。