介護現場では、いまコロナ第5波(デルタ株)がおしよせていて、医療崩壊とともに介護崩壊の瀬戸際にあります。以下、私の働く現場からのリポートです。

▽菅政権の棄民政策

 8月2日、政府は新型コロナウイルスで、中等症であっても「症状が軽い」、あるいは「重症化リスクの少ない」患者は「自宅療養」を可能とする方針を出しました。これまでは原則的にコロナ感染患者は入院、無症状や軽症の場合は宿泊施設に入るという方針でしたが、その方針を大きく転換したのです。

 今年春に大阪で感染者が急増した際、入院はおろかホテルなどの施設に入ることもできず、自宅でほぼ放置された患者が続出しました。大阪の死者数の多さは、それが一因だと言われています。現在の東京でも、コロナの症状が出て「どこに電話しても対応してくれない」という状況で、医療崩壊が始まっています。

 コロナ禍は既に1年半以上続いており、ワクチンだけではデルタ株を防げないことも以前から分かっていたことです。にもかかわらずオリンピックを強行し、ここにきて感染者増加、医療崩壊は、想定外では済まされません。感染者が増えたから「自宅療養」というのは、政府として何もしないと言っているだけ、対策とは呼べない「棄民政策」というべきものです。

 現在日本国内でコロナ治療薬として認められている、レムデシビル(抗ウイルス薬)、デキサメタゾン、バリシチニブ、抗体カクテル療法などが、すべて、入院しないと受けられない治療ばかり。「自宅療養」方針は、「重症化するまで放置する」ということです。

▽苦悩する介護現場

 政府の「棄民政策」は介護現場を直撃しています。これまで建前としては「コロナ陽性が疑われる時点で、保健所と医療機関が対応する」となっていました。したがって、介護事業所としては「いかに早期にコロナ陽性者を発見し、保健所と医療機関につなぐか」という対応に集中してきました。

 しかし「陽性患者への介護ケア方法」など厚生労働省から正規に研修が行われたことはなく、その分の手当項目もありません。今年4月から始まった介護保険の「コロナ加算」は、いままでの報酬にわずか0.1%加わるだけ。「計算がめんどくさくなっただけ」と現場からは不評です。

 そこに加えて、「自宅療養」方針が出て、陽性で要介護の患者さんをヘルパーに介護させようというのだから大変です。実際、私が勤める事業所の利用者宅で家庭内クラスターが発生し、現場に猛烈な摩擦が発生しました。対応を誤るとヘルパーたちが事業所を辞めかねない状況が続いています。

 ヘルパーはやる気はあるのです。だからこれまで、治療薬やワクチンがないなかでも一生懸命働いていたのです。しかし、政府がコロナ対策そっちのけでオリンピックを強行し、1年半という時間があったのに医療体制の強化は進まず、そのツケを介護現場におしつけるやり方にうんざりしています。ヘルパーの家族の不安も、かつてなく高まっています。とくにワクチン接種をめぐる一連の混乱は、介護現場のすみずみまで政治不信を加速させました。

▽「10日で安全」?

 デルタ株特有の問題として、「安全化日数」の問題があります。これまでの厚生労働省と保健所のコロナ対策では「陽性が確定してから10日経てば、感染は起きない」という公式見解で現場対応を行ってきました。多くの症例から、10日で陽性患者さんの体内のウイルス量が感染レベルを下回るから、というのがその理由です。

 ただ、これはオリジナルの武漢株とイギリス株(アルファ株)までの話。今回のデルタ株は「かつてなくウイルス発生量が多く、それが強い感染力をもたらしている」との報告もあり、本当に10日経てば安全かどうかは検証結果が出てはいません。

 10日経っても感染可能なウイルス量が残っていれば、ヘルパーと他の利用者も巻き込んで地域にコロナ感染を広げてしまいます。こんな大事なことを放置して、気軽に「自宅療養」を現場に降ろしてくるなんて。菅内閣は、直ちに辞めてほしいと思います。

▽コミュニティの力を

 政府の棄民政策にたいして、地域のコミュニティから運動が始まっています。神戸市では市民派の議員団が、昨年以来、継続的なコロナ対策を市当局に要求し続け、「コロナ陽性患者がやむをえず在宅療養になる場合は、専門の訪問看護師を派遣する(原則ヘルパーの派遣で対応しない)」「(政府から自宅療養方針が出たことに対し)これまで療養施設による対応を続けてきた経緯にふまえ、今後もこれを継続し体制を充実させていく」との対応を引き出しています。

 医療関係では、兵庫県尼崎市で外来診療と在宅医療に取り組む長尾クリニックの長尾和宏院長をはじめ、イベルメクチン(コロナでは保険外診療扱い)を使った在宅治療が広がっています。保険外診療は医師と患者双方に負担がかかりますが、ともにコロナをのりこえようとするコミュニティの運動です。こうした地域でのとりくみを支えるものとして、立憲民主党が国会に提出したイベルメクチン治療の保険適用のための法律なども推進していく必要があります。

 コロナ禍において、自民党などのトップダウン型の政党政治は生命力を失っています。いま大事なことは「コミュニティの力」を集め発展させていくことだと思います。