市東さんの農地・耕作地の強制収用を容認した最高裁決定(6月8日請求異議裁判上告棄却)から3カ月が経過した。いつ収用があってもおかしくない状況が今も続いているが、市東さんは「天神峰で耕し続ける」と、無農薬・有機野菜の生産と産直運動を続けている。

 昨年12月の高裁判決では、強制収用を認める一方、「話し合いは必要」などと付言がつけられた。しかし当のNAA(成田空港会社)は、まったくの音無しだ。そもそも農地取り上げの提訴(2006年)の際の「通告」を除いて、後にも先にも「話し合い」や「誠意ある対応」は皆無である。

 市東さん親子3代にわたって何の問題もなく耕し続けてきた。NAAは「空港に必要」というが、耕作地は現空港の運用に何の支障もないし、将来的な用途見込みも明らかでない。まさに耕作地の取り上げは不要不急というほかない。

▼誘導路の大規模補修

 さらに、この市東さんの農地や自宅の隣接地であるB誘導路(B滑走路に並行して走る)が大規模補修に入ることが明らかになった。期間は今年12月から来年10月まで。コロナ禍のなかB滑走路は昨年4月〜7月まで運行停止され、その後も運航便がほとんどない状況が続いている(天神峰・東峰地区の人びとにとって静かな環境が続いている)。コロナ禍がさらに拡大・長期化するなかで、航空便の回復も期待できず、B滑走路の長期にわたる大規模な運用制限に入ることとなったということである。さらにNAAは、20年度会計で714億円の赤字、さらに今年度も「大幅な回復はない」として670億円の赤字を見込んでいる。業績のV字回復など夢のまた夢である。

 市東さんの農地取り上げの根拠もなければ、その必要もないことは明らかだ。

 しかし一方では、NAAは第3滑走路の新設など機能強化を「中長期計画」だとして用地測量・買収計画を進めている。また千葉県は、農地転用の規制緩和などによる物流施設や宿泊・観光施設を整備する成田空港周辺地域の「国家戦略特区」の指定を推進している。北総台地の豊かな農業地帯を丸ごと破壊する暴挙を許してはならない。

 こうした状況のなかで、三里塚反対同盟は10・3全国集会(正午、成田市栗山公園)への結集を呼びかけている。

 全国の声と力で、政府・NAAに市東さんの農地取り上げ・強制収用を断念するよう求めていこう。農業と地域を破壊する機能強化計画や「成田空港特区」を直ちに中止させよう。