
伊方原発の運転差止を求める広島裁判本訴、第24回口頭弁論が行なわれた(8月30日、広島地裁)。今回は第8陣原告39人が新たに加わり、新原告の代表が裁判所に提訴した。原告の総数は351人になった。
口頭弁論では、1.「SA(シビアアクシデント)対策補充」、2.「基準地震動650ガルの過小評価」、3.「沿岸活断層」について準備書面が弁護側から提出され、山本幸造さん(山口県周防大島在住)が原告意見陳述を行なった。
山本さんは、広島県で定年まで畜産、家畜改良、産肉検定などの仕事に携わった経歴を述べた後、「福島原発事故の後、東北のブランド牛の競り値が暴落。皮肉なことに、それまで買い叩かれていた広島県産が上がった」と、畜産を通した放射能汚染の被害の広さを話した。「11年3月、福島第1原発事故が起こり、畜産農家が牛舎に『原発さえなければ』と書き遺し自死したことは、全国の畜産農家に大きな衝撃を与えた。私の人生観、社会観も一変した」と述べ、「一度事故が起これば、取り返しがつかない。二度と福島のような事故を起こさないため、伊方原発の運転を差し止めでほしい」と訴えた。
父親にすすめられ、「ヒロシマ平和の夕べ」や反核運動へ参加することになり、今回伊方原発広島裁判の原告になった。「原発をとめ、放射能のない安心して暮らせる環境、きれいな瀬戸内海を守る」と意見を表明した。
午後から、広島弁護士会館で記者会見・報告会がリモートで開催された。弁護団からの準備書面の解説、原告意見陳述の紹介、伊方原発広島裁判が発行したパンフ『「黒い雨」広島高裁判決から私たちが学ぶもの』の解説と質疑応答などがあった。(次回、口頭弁論期日は11月10日)
▽伊方包囲網で四電を追い詰める
四国電力は、今年10月26日を原子炉の起動予定とする計画を国に提出していた。6月に「2週間前倒し、9月18日から21日にかけ核燃料157体を原子炉に入れ起動させた後、10月17日に送電を再開。11月12日には営業運転を再開する予定だ」と発表している。
伊方原発差止広島裁判の新規仮処分では、7月21日第5回審尋で弁護団から裁判長に「四国電力の伊方原発運転の再開前に決定を出して欲しい」と要望。裁判長がこれを受け入れ、9月8日予定されていた第66回審尋は急遽取りやめ。8月31日を双方の書面提出期限とすることで審尋は終結した。
新規仮処分申請への広島地裁の決定日は、2週間程度前に通知が予想される。新規仮処分の決定日は迫っている。9月17日には松山市で「福島を繰り返すな!伊方原発再稼働を許さない!9・17集会」とデモが予定されている。愛媛、広島、山口、大分の伊方包囲網で四電を追い詰めていく。(江田 宏)