

▽市は買収を拒否
政府・防衛省が米空母艦載機による離発着訓練(FCLP)の移転を計画している鹿児島県西之表市にある馬毛島。
同市の八板俊輔市長は訓練移転反対を表明し、市有地の売却を拒否している。地元の住民も「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」などが粘り強い反対運動を続けている。
今年7月10日、元衆院議員の服部良一さんがこの島を視察した。その報告集会が9月19日、大阪市内で開かれた。主催は南西諸島への自衛隊配備に反対する大阪の会。
▼開発失敗の果てに
馬毛島は種子島の西方約12キロに位置する無人島で住人はいない。土地を所有する開発会社の社員が監視のために常駐。島外の人間が立ち入りできるのは漁師の入会地(島全体の1%)だけだ。
一時期、入植を試みられたが水不足のため失敗。その後、平和相互銀行が馬毛島開発株式会社を設立してほぼ全島を買収した。しかし島の開発計画はすべて失敗。続いて立石建設が馬毛島開発を買収し、ダストンエアポート社に改名。その下での開発もすべて頓挫。そこに目をつけたのが防衛省だ。馬毛島には夜間離発着を見越して滑走路が2本造成されていたのだ。
FLCPの候補地として初めて馬毛島が報道されたのは07年。11年6月の日米安全保障協議会(「2+2」)でFLCP移転候補地として初めて明記された。19年11月、防衛省は同社から評価額45億円の馬毛島を160億円という破格値で買い取った。
▼深夜3時まで訓練
空母艦載機はFCLPが必須だ。着陸時は超低空かつ高速で進入し、甲板にフックをかけて止まる。離陸時はフル加速。そのため周辺に大きな騒音被害をもたらす。この訓練を陸上で行うのがFCLPだ。特に夜間訓練が重視されており、着陸待ちで上空を旋回する戦闘機の騒音は耐え難い。
防衛省は20年8月、馬毛島の整備計画を公表。南西諸島防衛のために総合的な軍事要塞と位置づけた。陸海空自衛隊による訓練・活動施設、整備補給等後方支援施設として機能し、西日本の米軍と自衛隊の訓練拠点になる。自衛隊は空母保有をめざしており、馬毛島での離発着訓練を視野に入れている。
FCLP訓練は年に2回、各10日間実施。自衛隊の訓練は年130日間、真夜中の午前3時までおこなう。自衛隊は、護衛艦「いずも」「かが」への予定艦載機(F35B)の離発着訓練、陸自オスプレイの部隊展開訓練、空自迎撃ミサイル「PAC3」の訓練など、陸海空の訓練が予定している。馬毛島は米軍と自衛隊が合体した軍事要塞になろうとしている。
(池内潤子)