自殺トヨタ社員の労災認める 過密業務とパワハラ原因 遺族が逆転勝訴—名古屋高裁(9月16日時事通信)

 昨年7月の名古屋地裁判決は、上司からの叱責などについて、「発病させるほどの負荷だったとまでは認められない」としていた。今回の名古屋高裁判決は、これを〈逆転〉した。

 日経新聞は、「逆転」の見出しは使ってない。グローバルに展開する日本トップの大企業トヨタの現場で何が起っているのか。それをいささかでも暴いた判決。これにたいして、政府、厚生労働省、経済産業省、法務省は、コメントしてしかるべきではないのか。弩!労働界やメデアからも鋭いコメントがない。省!

 トヨタ労働者(当時40才)は、2009年10月頃にうつ病になり、翌年1月、豊田市の雑木林で首つり自殺。連れ合いは労災補償を求めたが、豊田労基署は12年「業務上の疾病に該当しない」と拒否、遺族年金や葬祭料も不支給とした。

 今回の判決は、「報告などをするたびに大声で叱責」した事実を、「社会通念に照らし許容される範囲を超える精神的攻撃」と判断。また男性の業務が、客観的にみて、「精神障害を発病させる程度に強度のある心理的負荷」と判断した。

 男性は、1990年に入社、08年4月以降、新型プリウスの部品生産ライン立ち上げの主担当、09年5月からは、並行して海外工場の生産立ち上げ、同年9月からは、中国関連業務にも関わった。まさに超過密労働だったことを認め、基準の改正で20年に新設された「社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃」が適用された。

 この程度の判決をもって許してはいけない。その下で働く非正規労働者、下請け労働者、その現状は「社会通念」をこえている。

 トヨタ自動車は、「手を差し伸べることができなかったことは反省すべきで残念。風通しの良い職場風土を築くよう、努力する」とコメント。空虚な言葉いらない。弩!

 謝罪と補償を。莫大な利益・内部留保を、まず労災死者家族に、非正規労働者に吐き出せ。

 労働組合が、「命を守る防波堤」「命と希望の拠り所」とならなければ。

(9月26日 狐火)