「島々シンポジウム4 沖縄本島から琉球弧の軍事要塞化を問う」(9月12日、オンライン)から、山城博治さんの要旨をまとめた。伊波洋一、高良沙哉、大久保康弘、新垣邦雄、伊佐育子、三上智恵、小西誠さんらから、学ぶべきことの多い発言があったが紙面のつごうで山城博治さんの訴えを紹介したい。山城さんは、沖縄平和運動センター議長を退任したばかり。一市民として考えを表明した。(取材、文責・小見出し/高崎庄二)

 私の問題意識を2、3述べたい。先島の軍事基地化の問題、辺野古を中心とする沖縄本島の基地問題にかかわってきたが、私の頭の中では繋がりませんでした。もしかしたら、辺野古とか高江とかの基地建設はカモフラージュされたものでないのか。沖縄県民の関心をそこに向けさせ、先島、離島に無条件で南西軍事基地をつくるものでないのか。それは『週刊金曜日』にも述べました。

 みなさんがよく言われる「オール沖縄を脱皮し全県民的なたたかいの構築を」。その気持ちはよくわかる。けれどもよく考えると、私たちのなかでそうせざるを得なかった。95年の少女暴行事件、96年、97年のSACO合意、97年の名護市民投票、04年沖国大のヘリ墜落、辺野古の基地建設開始、06年のPAC3の配備、12年オスプレイの配備、13年、14年「建白書」を中心とした東京でのデモ行進。ここから怒涛のオール沖縄体制ができていきます。

▽オール沖縄と先島軍事化

 14年に沖縄知事選挙で翁長さんが当選し、15年にオール沖縄が結成されました。辺野古新基地に対しては、全県民の総意が確認された。この流れを否定することはできないし、それは沖縄本島における基地反対闘争の動脈として流れている。ただし、ここに先島の問題はかかわらない。沖縄本島からは先島のたたかいが見えてこなかった。政府が尖閣諸島の有事を協調するが、それは尖閣問題として考えてきた。

 アメリカのアジア戦略、バイデン政権がいっている台湾有事に問題があるわけではない。経済的にも軍事的にも大国化していく中国をどこかで抑えたい、中国の覇権国家化は許さない。覇権国家たるアメリカが、台頭する勢力を許さないというのが今日の事態である。それが中国を取りまく先島・沖縄・南西諸島の問題だ。ここに思いがいたると、沖縄の革新勢力が、私たち自身が勇気をもって一歩を超える必要がある。そうでなければ私たちは、地獄を見ることになるのではないか。

▽もう1つの反基地運動

 そこで提案、保守勢力も含めたオール沖縄が自衛隊の問題に関知しない、「建白書」での域を出ないというのもわからないではない。つまり「建白書」は、オスプレイ配備反対、日米地位協定の見直し、辺野古新基地建設反対でまとまっている。これは、沖縄の保守勢力の良心的部分と革新との最大公約数だと思う。

 今の事態は、私たち沖縄県民、すべて島々を尖閣防衛、台湾防衛を叫び、対中国戦争の防波堤にしていく。アメリカの戦略を迎え撃つために、従来の社民、社大、共産の本隊がオール沖縄とは別に反戦運動を提起していくことが必要だと思う。それなしには、沖縄のたたかいが進まなくなると考えるわけです。

 これが一つ。野党の確たる勢力、3党が勇気をもって発信せよ、と。誤解のないように言いますが、多くの人たちが沖縄有事を声高に叫ぶことはどうかと思う。保守も革新も有事を叫ぶことをとおし、「戦争して何が悪い」という風潮をつくりかねない。「有事」を強調する言い方に工夫が必要ではないのか、運動現場から思います。

▽辺野古新基地の持つ意味

 もう一つは、辺野古の問題です。辺野古の新基地建設を言うことにより、先島の軍事基地化が見えなくなる。今、与勝のミサイル配備を考えると、沖縄本島に指令部建設が絶対に必要になってくる。与勝半島に司令部機能を持たせることはできない。もしも中国と戦争が始まれば、与勝の自衛隊基地は小さくてとてもその任に堪えられない。

 結論的に言うと、辺野古新基地はそのためにある。新基地は、1800メートルの滑走路、その対岸には5万トン級の艦船、潜水艦、空母が接岸でき、オスプレイ200機も配備される。佐世保にいる自衛隊、日本版海兵隊・水陸機動団第3連隊が辺野古に配備される。マスコミで報道され、一応は撤回したがそういうものだろう。後方のキャンプハンセンは訓練場となり、キャンプシュワブの弾薬庫から弾薬を積んで戦場に向かう。

(つづく)