7月3日の熱海市伊豆山地区を襲った土石流に既視感を抱く。私が神戸で就職した直後の1967年、集中豪雨による山崩れで宇治川商店街が飲み込まれ、その土砂は元町の三越におよんだ。死者84人、被災家屋は約4万戸▼六甲山系を背景に持つ神戸は災害の街だが、「山、海へ行く」の埋め立て土砂の採取がそれを促進した▼熱海の土石流では26人が犠牲者となり1人が行方不明(8月末現在)。崩落した土砂は河道を海岸までの2キロを猛スピードで下り、130棟(127世帯215人)の家屋を一瞬にして押し流した▼静岡県の調査でずさんな埋め立てが明らかに。盛り土には産廃残土が多く含まれ、排水設備が設置されていなかった。全国で66万カ所が同じような条件にあるという。安倍・菅の「国土強靭化」の正体だ▼8月、被害者遺族は土地の前所有者を業務上過失致死容疑で、現所有者を重過失致死容疑で刑事告訴。▼7月6日の朝日川柳は「土石流跡にくっきり人災痕」と詠む(礫)