
市民デモHYOGO連続学習会の1回目、「命と暮らし�@『豊かな日本』の貧困・格差問題、概観」に参加した。(9月下旬、神戸市内、以下は要旨。取材・まとめ/高崎)。
講師は、奨学金の問題などにとりくむ佐野修吉 さん。コロナ禍のもと、ますます貧困・格差問題は深刻になっている。
豊かさの指標に GDP(国内総生産)がある。これが全てではないが、日本は世界3位で一人あたりでもドイツ、イギリスと肩を並べている。しかし、1970年から08年までの実質賃金は下がり続けている。実質賃金指数の国際比較(97年=100)は、アメリカが115・3、EU 28カ国平均は113・9、日本は90・1だ 。背景には非正規労働者の増大、正規職の賃金低下がある。
バブル崩壊後の90年代から、ホームレースの顕在化によって、貧困を社会問題として日本社会が認識した。そこからワーキングプア、シングルマザー、子どもの貧困、奨学金、外国人実習制度等が問題化した。
富裕層の増大とともに貧困層も増大している。新自由主義へ転換するなか資本家階級が富の分配にかんする「譲歩」をやめた。資本主義経済システムが大変革されたが日本のリベラル・左翼は、それに気付かなかった。
95年に日経連が新時代の日本的経営を発表した。内容は雇用形態、賃金制度のあり方の一大変化である。非正規労働者、能力主義・成果主義的賃金が導入された。しかし、労働者は賃金が下がっていると認識できなかった。
40代の人たちが、奨学金を返しながら非正規で働いている。その現実を、貧困だと思っていない。その人たちに社会を変えようというメッセージを届けることができていないのではないか。「あなただけの問題ではない」と世代に応じた語りが必要だ。一方的に話すのではなく、半分以上は、聞くことに徹すべきだ。
▽参加者の意見
「かつては高校・大学に進学する人はごく一部だった。貧しさの質が問題になるのでは。今は個人がバラバラにされている。昔は労働組合もしっかりし、労働者のつながりがあったと思う」。「女性が公園で死亡していた新聞記事があった。その女性は、飲食店をクビになり、公園で寝泊まりをしていた。段ボールには『晩ご飯をください』と。私たちは、こういう現実についてあまりに知らない」。「オキュパイ運動で『1%と99%』と言われた。99%はすべての階層を一緒くたにし、違いを見えなくする危険性がある。統計では『1人当たり』と括るが、それも問題を見えなくする」。「資本家階級と労働者階級という用語法はどうか。今は、資本と経営が分離しており、実感されないのでは。運動をすすめるとき、人びとに染み込んでいく言葉が必要がある」。
講師の佐野さんからは「斉藤幸平さんが注目されているが、『資本主義はダメだ』という考え方を広めていくことが重要だ」などの答えがあり、次回の学習会につないだ。
米ソ冷戦、日米対立の時代から「米中対立」が軸になり、新自由主義の矛盾が顕在化している。次回も参加し、もっと身に付けたい。