
▽自民まとめ改憲4項目
いわゆる改憲4項目、18年3月に自民党の憲法改正推進本部がまとめた。しかし大会等では決めていな
い。自民党内でも決まっていないものが、一人歩きしている。
4項目の1つは9条。(1)2項(陸海空軍、戦力、交戦権は保持しない)を削除、(2)2項は維持し、自衛隊を明記(安倍さんの考え方)、(3)2項維持、自衛権を明記の、3案がある。(2)の考え方が前面に出ていると言っていい。2つは、緊急事態条項。3つは教育を受ける権利、無償化等。4つは参議院選の合区解消。3、4は、いずれも法律でできることであり、憲法改正の必要性の議論ではない。やはり改憲問題は、9条と緊急事態条項に絞られてくる。
▽9条2「自衛隊保持」新設
まず9条。9条はそのままにしておき、「9条の2」を新設する案。いろいろあるが、「総理大臣を最高指揮官とする自衛隊を保持する」とする。その必要性、危険性はどうか、両方から検討してみる。
従来から「自衛隊は合憲」が、政府の見解である。それなら書き込む必要はない。敵基地攻撃論も「攻撃を受けた場合の自衛は可能」という解釈であり、核兵器すらも「保有、使用も自衛権行使の範囲内であれば憲法上可能」というのが政府見解だ。行政機関、防衛省のもとにある「自衛隊」を、わざわざ書くのも異例である。憲法に明文で書かれているのは国会、内閣、最高裁と会計検査院のみ。自衛隊を書き込むのは、無理スジの話だ。
▽「書き込むだけ」か
「書き込むだけ、いままでと変わりはない」と言うが、安保法制で集団的自衛権を行使できるようになった「自衛隊」が憲法に明文化される。活動範囲や兵器等を含め、整合性がとれなくなる。「武力行使の目的で武装した部隊を他国の領土…等に派遣する海外派兵は違憲」(54年、衆院決議。60年4月、岸首相)。「日本は専守防衛である」(60年2月、中曽根防衛庁長官)等々。しかし、日本は自衛隊をたびたび海外に派遣している。湾岸やイラクに行ったときも、「海外派遣であり、派兵ではありません」ということだ。派兵と派遣はどこが違うのか。
▽海外派遣が派兵になる
政府は、「目的が違う。武力行使目的で行く場合は派兵、そうでない場合は派遣」と説明してきた。それなら、武力行使を目的に海外に行けない。ところが集団的自衛権では、行使できることになる。従来からの「海外派兵」の違憲性と、いまの自衛隊の活動と衝突する可能性がある。「専守防衛」も、これまでの憲法解釈、国家政策と違ってくる。専守防衛ではなくなってきている。
また、従来は「自衛隊は、必要最小限度を超える実力を保持できない」という制約があり、「通常に言う軍隊とは異なる(国内法)が、ジュネーブ4条約では軍隊に該当(国際法)」となっていた。ジュネーブ条約は、捕虜の保護を規定している。そのため国内法と国際法を敢えて該当させてきた。従来の自衛隊と集団的自衛権で変質した自衛隊は、矛盾を抱えている。しかし、2項があるために制約が生きているとすれば、まだ考えられる余地がある。
法秩序に矛盾が生じるとき、「憲法に違反する法律は無効」「後法が前法を廃止」など原則がある。それに依ると、9条の2が追加された場合は従来の政府見解を上書きしてしまう。これまでの、憲法上の自衛権の規制はすべてなくなる。「書き込むだけ。変わりはない」というのは、まったく違う。(つづく)(取材・文責/竹田)