11日の衆議院代表質問で立憲民主党の辻元清美議員は一枚の手紙を読み上げた。森友学園事件で「赤木ファイル」を記した赤木俊夫さんの連れ合い、赤木雅子さんが岸田首相に宛てた手紙である。そこには「財務省の調査は行われましたが夫が改ざんを苦に亡くなったことは書かれていません。なぜ書いていないのですか?」「夫が正しいことをしたこと それに対して財務省がどのような対応したのか調査してください」と綴られていた。

 この真っ当な問いかけに答えることができない政治を続けてきたのが安倍・菅政権の9年間だったのだ。なぜ、新型コロナの感染爆発の最中で東京五輪を強行したのか。なぜ、日本学術会議が推薦した会員候補6人を任命しなかったのか。なぜ、河合元法相夫妻に渡した1億5000万円の使途を明らかにしないのか。なぜ、沖縄県民の民意を踏みにじって完成の見込みのない辺野古新基地建設を強行するのか。

 そして、なぜ、コロナ禍で多くの人びとが犠牲を強いられているなかで、株価だけが高止まりしているのか。答えは簡単だ。日銀と年金積立金管理運用独立行政法人の公的資金を株式市場に投入し、株価を買い支えているからだ。昨年10月時点で両者の総保有額は67兆円にのぼり、時価総額の12%を占めている。コロナ失業が10万人を超え、炊き出しやフードバンクで何とか生活をしのいでいるひとが増え続けているにもかかわらず、「官製相場」によって、ほんの一握りの上場企業の株主たちが「濡れ手に粟」の暴利を得ているのである。「71カ月間の景気拡大」にもかかわらず、労働者の実質賃金が下がり続けた理由もここにある。

 岸田首相が「成長と分配の好循環」を掲げるのなら、かくも不公平な分配が続けられているのはなぜかという疑問に答えなければならない。それはできないであろう。なぜなら、「それが資本主義だから」としか答えようがないからだ。いまや資本主義の経済成長は、人びとを貧困に陥れ、人間らしさを奪い、地球環境を破壊し続けることによって辛うじて維持されているにすぎない。

 いま世界各地で起ち上がっている若い世代の主張の核心は、こうした資本主義への根本的な異議申し立てである。日本もその例外ではない。今月31日の総選挙は彼らの胸に響くものとなるのか。必要なのは、資本主義以外の可能性に想像力を働かせることである。