▽緊急事態条項の危険

 18年、自民のまとめ要旨。「…異常、大規模な災害により、国会が法律をつくることができない…とき、内閣は…政令を制定できる。…制定したときは…速やかに国会の承認を求めなければならない」とする。そもそも必要性があるのか、危険ではないか。

 大災害のときに、対応が遅れることは多々ある。それは憲法のせいなのか。「憲法に緊急事態条項がないから、遅れた。私たちのせいではありません」。ほんとうか。政治家の発想、言い訳ではないか。

 日本国憲法に緊急事態条項がないのは、根拠、理由がある。「民主政治を徹底、国民の権利を十分擁護するため…憲法は、行政権の自由判断の余地を少なくするよう考えた。特殊な必要が起れば、臨時議会を招集。衆院解散中は参院の緊急集会により暫定措置、同時に具体的な必要規定は、平素から濫用なきにおいて準備するよう完備しておく…」(要旨/1946年7月、帝国憲法改正案委員会、金森国務大臣)。

▽不要無用の緊急事態条項

 民主主義や人権の観点から、緊急事態条項はいらないとしている。「もしも」のときは、どうするのか。�@臨時議会、�A参院の緊急集会、�B平時から法律を準備する。そのため、災害対策基本法や原子力対策基本法、いまの新型インフル対策特別措置法などがつくられてきた。

 対策、対応が遅れるのは、憲法や法律のせいではない。政治、政治家の問題ではないか。権限があっても適切に運用できない、日本の政治に問題がある。「緊急事態条項がないから」というのは、原因ではなく「結果」である。緊急事態条項新設の必要性はない。

 さらに、つくった場合の危険。緊急事態条項は、人権や憲法を含む「法の停止」「権力の集中」に大きな特徴がある。非常に、やばい権限だ。

 日本でやった濫用例。かつて治安維持法改正案が出された。…結社の指導者等への最高刑を死刑に引き上げ。しかし、議会は廃案にした。それを「緊急勅令」(当時の緊急事態条項と言える)により議会の判断を否定し、政府が制定を強行した。それが悪名高い治安維持法だった。

 自民党の言う緊急事態条項は、12年自民改憲案と比較しても非常に大きな問題がある。すべてを「法律に任せる」としている。国民投票の段階では、何も具体的にわからない。政府に「丸投げ」である。

▽しっかりと運動をつくる

 全体、改憲をめぐる政治的な現状は、どうなのか。米中をめぐる国際環境の悪化。いまアメリカは同盟関係を使いながら、中国封じ込めを進めようとしている。QUAD(米日豪印)、NATOもイギリスが核弾頭増強を公表、対中国を念頭においていると明言している。フランスも九州で日米仏の共同演習を実施、仏の参加は初めてだった。ドイツもアジアにフリゲート艦を派遣した。

 安保法制定後、日米の軍事協力の拡大、南西諸島への自衛隊増強、共同演習の拡大、重要土地規正法の成立など。日本は、どこに向かうのか。

 菅総理退陣、新総裁と政権の動向、そして総選挙が続く。どういう政治になるかはともかくとしても、私たちは改憲をめぐる学習や運動をしっかりとつくっていきたい。(おわり)(取材・文責/竹田)