
今から55年前の1966年10月21日、日本労働組合総評議会(総評)は米軍の北ベトナム空爆に抗議する「ベトナム反戦統一スト」を呼びかけ211万人が参加した。フランスの哲学者サルトルは「世界の労働組合で初めてのベトナム反戦スト」と高く評価した。以降、10月21日は「国際反戦デー」と呼ばれるようになった。
毎年この時期に京都で開催される反戦・反貧困・反差別共同行動は、今年で15回目を迎えた。10月17日、京都市内の円山野外音楽堂で行われた集会では、一橋大学名誉教授の鵜飼哲が講演した。
平和に生きる権利
10月21日は「平和に生きる権利の日」である。その権利が「平和の祭典」を自称する東京五輪の強行によってじゅうりんされたのを私たちは目の当たりにした。鵜飼さんによれば、2021年の10・21は、「『戦争の論理』を内包するすべてのメガイベント、開発計画を民衆が『平和に生きる権利』を高く掲げて拒否することを訴え、そのことを通して好戦的勢力の支配の転覆を目指す場」なのである。
外国人の人権
2018年、東京五輪に向けて日本を「世界一安全な国」にするために、警察庁、法務省、厚労省は「不法就労等外国人対策の推進」を打ち出した。これによって入管施設における外国人の長期収容、虐待、ハンスト死、自殺未遂が頻発した。その中で起きたのが名古屋入管に収容中だったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件である。
鵜飼さんは、「外国人の人権じゅうりんを当然とみなしている国で、五輪が演出する一過性の民間交流や『多様性のスペクタクル』に何の意味があるのか」と問いかけた。そして、今年5月、難民申請中の強制送還を可能にする入管法改悪案を廃案したことは、非欧米系の外国人が平和に生きる権利のための重要な一歩であると評価した。
ジェンダー視点を貫く
「このようなたたかいは戦争政策に反対するたたかいと表裏一体だ」と述べて、鵜飼さんは自民党が選挙公約に掲げた「敵基地攻撃能力」に言及した。「防衛費のGDP比2%以上(年10兆円超)を目指す政権とは何か。この意図を打ち砕かなくてはならない」と語気を強めた。さらに話は、コロナ禍で女性への犠牲が集中していることにおよんだ。特に働くシングルマザーの貧困率はOECD諸国で最悪である。公平な分配のためにはジェンダー視点に貫かれた分析に基づいた構造的変革が不可欠なのだ。最後に「時代を超え、国を超えて民衆の平和に生きる権利を獲得するたたかいをとも進めていこう」と述べて公演を締めくくった。