
四国電力伊方3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島県と愛媛県の住民7人が仮処分を申し立てていた。11月4日、広島地裁(吉岡茂之裁判長)はこれを却下した。地裁前に、「伊方3号機 差止ならず」「非常識決定 まだ高裁がある」の垂れ幕が。
河合弘之・弁護団長は「原発の耐震性や巨大地震について、危険性の立証責任は住民側にある」とした広島地裁決定について「福島第1原発事故のとき、『近いうちに地震が来る』と誰か言いましたか」と決定を批判。申立人の原田二三子さん(62歳)は、「確実に原発を止めるまで闘い続ける」と話した。報告会・記者会見で「決定骨子」と「決定要旨」が配られ、弁護団は、「違法不当な決定は認められない。直ちに高裁に即時抗告する」と声明を発した。
この裁判で弁護団は、「常識に基づき、分かりやすく」問題を提起し判断を求めたが、裁判所は一知半解の理由で申し立て人と弁護団の主張を退けた。四国電力は「M9の南海トラフ地震が伊方原発直下で起きたとしても、伊方原発には181ガルの地震しか到達しない」という、非常識な地震動算定をしていた。
M9の東北太平洋沖地震では、震央から180キロ離れた福島第1原発の固い岩盤で675ガルの地震動が到来したのだ。
今回の決定は、伊方原発の岩盤での181ガルと福島第1原発の岩盤での675ガルを比較し、「一概に181ガルを不合理だとは言えない」とし、「差し止めが認められるには、住民側が近いうちに650ガルを超える地震が発生することを立証しなければならない」と無理難題を主張。
広島、愛媛の住民は、反・脱原発をめざす人々と連帯し、伊方3号と全原発を止めるまでたたかう。(江田 宏)
樋口英明さん(元福井地裁裁判官)コメント 住民側がその補正をせずに181ガルと675ガルを比べているので具体的危険性の立証は不十分だとした。このようなことは四国電力さえも主張していなかった。住民側は「震源特性・伝播特性・増幅特性等は正確に見極めることはできないので、そもそも最大地震動(基準地震動)は予知予測できない」と主張していた。じつに奇妙な判断といえる。(要旨抜粋)