京都大学に盗掘された琉球人遺骨の返還を求める裁判の11回目。今回は亀谷正子さん、松島泰勝さんの本人尋問があった。第一尚氏の系統から亀谷さんが、先住民族問題を松島さんが証言した。(10月29日)

 亀谷さんは、「亡くなった人は琉球では神様になって骨になる。それが骨神。昔から伝わっている考え方。普通はお墓に骨があるが、百按司墓では、それはできない」と話した。証拠資料に、第一尚氏の系統図を提出している。「盗掘された骨はDNA 鑑定のため粉々に打ち砕かれる」と亀谷さんは涙を流した。

 松島さんは、京大に保管している遺骨の返還と松島さんへの京大による不法行為の2点について証言した。

▽先住民族の文化と精神

 京大は「原告は祭祀継承者にあたらない」と主張するが、「祭祀継承者」を定めた民法897条は、ヤマトの慣習にもとづいた規定であり、それを慣習・習俗が異なる琉球民族に押し付けてはならない。先住民族の文化と精神を踏みにじってはならないのであり、国連は琉球民族が先住民族であると日本政府に勧告している。京大の姿勢には日本の植民地主義的な性格と琉球差別の構造的な問題が現われている。

 裁判の報告集会では、原告の亀谷さんがこれまでの裁判の支援・傍聴へのお礼が述べた。松島さんは琉球先住民族として遺骨返還権を持っていることが話した。「当初は裁判になるとは思ってもいなかった。私が京大に要求したのは『遺骨を見せてください』ということと、いくつかの質問だけ。京大が一切を拒否したので訴訟になった」と経過を説明。「私が先住民族であることを自覚したのは1996年頃。 学生としてアイヌ民族の人たちと交流したことから。その後、多くの先住民族との交流によって確かなものになった。裁判もいよいよ結審を迎える。裁判をとおして、運動を大きくしていきたい」と話した。

 

▽植民地主義を問う

 この他、ドキュメンタリー番組「学知と骨」(毎日放送、9月26日深夜放送)の制作担当者が、「最初は、昔の墓から骨を発掘、研究するのは悪いことではないのでは、という意見もあった。しかし、番組をみて『酷い』との声が寄せられた。継続して取材したい。系列局の琉球放送でも放送する予定」と報告。京大の学生は、「アイヌ、琉球の問題について裁判から学んでいる」と話した。また各地の支援のとりくみが報告された。  

 京大の姿勢からは、アジア・太平洋戦争のなかで、京都帝国大学が果たした役割への反省を少しも感じられない。琉球遺骨返還訴訟は京都大学の在り方、日本の植民地主義的な体質を問う裁判である。次回は22年1月20日、午後2時半から(京都地裁)。判決期日も決まる。(高崎)