30以上の異なる政党と派閥が幅広く結束する。拡大戦線が得た結論は、イデオロギー上の違いは維持しながらも、共通のプログラムで合意すること。それで一体性や統一性が得られる。各々の夢と思想を持ち続け、共通の闘いで結束するのだ。

▽拡大戦線の歴史

 1971年発足から73年の軍政弾圧がはじまるまで。共産党、社会党、キリスト教民主党、コロラド党から離脱した指導者などが中心となり、他のグループも糾合。

 73〜84年、軍政による迫害の期間。軍部はツパマロスを壊滅させ、左派系政党の弾圧に移行。迫害を受けて逆に「拡大戦線」魂が成長した。

 85年に軍政が終わり89年に元ゲリラたちが加入するまで。内部で論争が起こり、加入を認めるまで3年かかった。

 90年、首都モンテビデオの県知事ポストを拡大戦線が初めて奪い取り、左派に十分な統治能力があることを示す。拡大戦線への支持が大きく広がった。新自由主義的政策を推進した保守政権から人心が離れていった。

 05年、ウルグアイ史上初めて、左派として政権をとってから現在まで。

▽幅広い結束に成功

 イデオロギーも立場もかなり違う人たちが、本当に結束を維持できるのか。ラテンアメリカの他の国でも、同様の試みはあったが、どこも失敗した。選挙に勝つためだけの連合だったため、政権を握れば壊れてしまう。

 ウルグアイでは「内部で粘り強く政治交渉を続ける文化」を築くことができたから勝利した。その1点目は、力のある大きな政党が、小さな政党を押しつぶしてはいけない。どんな政党やグループも他を支配したり、自分の判断を押しつけてはいけない。むしろ、大きな政党であればあるほど、小さなグループの声に耳を傾ける。2点目は、共通のプログラムを発展させること。イデオロギー論争は収拾がつかなくなる。3点目は、社会運動や労組活動、大学教師などの幅広い層との関係を築き、社会に根を張る。「政治エリートだけの組織ではうまくいかない」。世論の幅広い支持を得るには、異なる意見を集めてできた政策綱領が重要なのだ。(脇田和也)