
維新の獲得議席は、民主党政権から安倍政権になった12年総選挙で54、14年41と伸び、17年は11に減らしている。比例得票率は、それぞれ20・4、15・7、6・1%である。今回は12年、14年に「戻した」とも言える。維新は7、8年年前から兵庫へ地方議員、支持票を伸ばしてきていた。
▽兵庫12選挙区で野党は1
大阪は19選挙区中15議席、19区のうち公明が4(維新は候補を立てず)、自民は比例復活2のみである。立憲候補(大阪10区)を既成政治と守旧の“代表”のように、凄まじい「口撃」を加えた。一方、「改革が不十分」と右から自民、保守を攻撃する。
7月の兵庫県知事選は、菅・松井ラインによる「自民・維新連合」が画策され、維新知事の誕生を許してしまった。その後の総選挙は、危惧していた結果となった。12の選挙区に、維新は9人を立て選挙区1、比例復活8の全員が当選。都市部だけでなく但馬・丹波、西播磨、北播でも比例2位に着け復活させている。立憲は8人の候補中やっと選挙区1、比例復活1である。自民は小選挙区8人、比例復活2人(2選挙区は公明と住み分け)だった。兵庫の比例区、おもな党の得票率は維新32・08(大阪42・51)、自民27・4、立憲13・36、公明12・26、共産6・22、れいわ3・27、国民3・02、社民1・17と維新の突出ぶりがわかる。
関西のメディア(とくにテレビ)はコロナ以来連日、吉村府知事、松井大阪市長を登場させ「やっている感」丸出し。橋下元市長も加わり、言いたい放題の「野党攻撃」を繰り返した。コロナ禍のもと、ずっと選挙運動をやっていたのと同じ。医療対策が失敗し、ダントツの患者数、死者数を出した「大阪では実行」の中味には、まったく触れない。「改革、競争、実行」の大見出しチラシが繰り返し撒かれる。「身を切る改革」維新の資金は、潤沢のようだ。どういう利権、資金を得ているのかも、解明しなければならない。
▽「下」への同調圧力
真面目で真剣な知人が、若い人たちに「維新に投票しては、だめ…と言おうとするけど、伝わらない」と嘆いた。維新のプロパガンダに、対抗プロパガンダではなく、事実と内容にもとづいた批判が必要だろう。
「そういう社会ではない、オールタナティブ」という展望と提起が求められる。維新の「身を切る改革、知事や市長の歳費、期末手当をカット、返上した」という決まり文句は、どういう方向に向かうか。OECD諸国中、日本は20年ずっと賃金が上がっていない。世帯の3割が年間所得300万円以下、200万円以下は17・9%だ(17年)。保育士や介護職の低賃金が言われて久しい。プロパガンダとしての「身を切る改革」への共感は、より「下」へ同調させる政策と社会へつながる。ある意味、それを率直に言っているのに、である。
▽競争・格差社会への維新
「比例近畿の届出ビラ」から、維新の主張を見てみた。「改革、競争、実行」「身を切る改革実行中」「維新は、やる」「次の時代を創る」という大見出し。「社会保障制度に安心、納得を。ベーシックインカム、再配分」などとあるが、よく読めば「社会保障全体の改革推進」「医療費の適正化と質の向上」「雇用の流動化とチャレンジ支援」…など、競争・格差、儲からないものは切り捨てるという、格差社会への「改革」であることがしっかり書かれている。見た目の言葉に惑わされず、それを見抜く“協働”行動をどのようにつくるか。
▽参議院も野党ゼロの兵庫
兵庫は16年参院選から、定数2から3と増になった。定数2の場合、「自民、民主系」各1議席をとり合っていたが、定数3になると公明、維新が参入。16年は維新が民進(当時)現職を破り3位と自民、公明、維新が占め、野党は1本化できず議席を失った。19年も同じ構図で独占され維新がトップ、公明、自民となった。半数改選の参院6議席とも、野党ゼロである。
▽弱い、市民・地域とのつながり
野党候補を支援した印象から。野党候補も、ときどき見かけた自民候補も、盛り上がりを欠いていた。街頭演説に人が集まっていない。自民は後援会や、日ごろから地域活動が比較的ある。小まめに地域の催し、商店街、支持者を回っており、地方議員も動いているのを見る。立憲などの地方議員は、ほとんど見ない。地方組織はないと言っていい。地域活動、住民・市民との交流がない。それも明らかになった選挙だった。
「悪夢…」と、繰り返し言われる。何が悪夢だったのか。50年に及ぶ自民党専制を有権者、主権者の圧倒的な投票で打ち破ったのに、あとは政党におまかせ。「子どもは社会が育てる」という子ども手当も、すぐに「バラマキ」批判に煽られた。躓いたら、見捨ててしまう。そうではなく、私たちが社会と政治の主体という意識と行動が、求められたのではないか。「おまかせ」なら、同じ轍を踏むことになる。(兵庫/竹田)