
2018年の春闘の最中、非正規雇用労働者の格差是正を求めた労働契約法20条裁判で、違法認定は避けられないと判断した日本郵政グループ(以下、「郵政」)は、正社員の労働条件引き下げで「格差是正」に対応するという方針を示した。日本郵政グループ労働組合(JP労組)が内部の怒りの声を抑え込んでこれを受け入れたため、正社員の一部に対する不利益変更が強行された。
昨年10月15日、20条裁判で最高裁は「格差は不当・不合理」と認め、郵政の非正規雇用労働者が大きな勝利を得た。
ところが、今年9月になって郵政がようやく示した「労働契約法 20 条最高裁判決を踏まえた労働条件の見直しに関する基本的な考え方」(以下、「考え方」)は、またしても正社員の労働条件を引き下げた。非正規に対する改善もほとんどない。それは、すべての郵政労働者にとって認めることができない内容だった。
「考え方」では、(1)現行より厳しい、非正規職への解雇要件の新設、(2)病気休暇の30日間無給化、(3)夏期冬期の有給休暇削減などが示された。
(1)では、3年を基準に無期転換を希望しない者と、低評価者(物言う労働者)を解雇できるようにする。労契法旧20条(現パートタイム・有期雇用労働法8条)に基づいて格差是正の裁判をすることができるのは有期雇用の労働者に限られている。もしも裁判を継続するために無期転換を希望しなければ、3年で解雇するというのである。要するに、「金輪際、20条裁判をやらせない」というのが郵政の本音だ。こうして非正規雇用労働者が、ますます物を言いにくい状況を作り出そうとしている。
これは、格差是正を目的とした労契法18条やパート・有期雇用労働法8条の立法趣旨に真っ向から反している。絶対に許すわけにはいかない。
(2)は正社員の労働条件を非正規並みに押し下げて「格差解消」と強弁するもの。まさしく非正規雇用労働者が求めた労働条件の改善を全くやるつもりがないという宣言だ。郵政の言い分は「病気休暇の無給化は、世間の常識。これまで手厚すぎた」というもので、全く許しがたい。
(3)は、正社員に年休とは別に夏期・冬期休暇として6日間の有給休暇を認めていたのを、4日間に削減し、削減分の2日間を有期雇用社員に付与するというもの。正社員から見れば「有期社員に有休を2日分奪われた」ようにうつる。労働者間の分断をあおる悪らつなやり方だ。
10月から土曜休配が始まり、労働強化につながる現場も少なくない。中期経営計画「JPビジョン2025」では3万5000人削減が打ち出された。集配現場はドライブレコーダー配備や端末の携帯義務化で常時監視と労務管理が強化されている。それが「悪評価」や処分の乱発につながっている。パワハラも減っていない。近畿管内では交通事故が多発している。こうした中で、現場で声をあげて闘う活動家のもとへ労働相談が続々と寄せられている。その相談を通じてたたかう労働者の隊列が確実に強化されつつある。現状を変える力がそこにある。22春闘に向け、組合の違いをこえた職場からの闘いが求められる。(浅田洋二)
※この記事の詳細は、「またしても不利益変更を画策する日本郵政」をご覧ください
病気休暇については、その中に生理休暇も含まれている。それを有給から無給の扱いに換えることは、郵政が掲げるダイバーシティ推進は嘘っぱちでしかないということです。
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JP労組、郵政ユニオンいずれの掲示板にも、1月2日、3日出勤した非正規社員にも祝日給として135/100の割増賃金を支払うことが決まったとありました。この1月2日3日の扱いについて9月に示された会社案は、正社員の割増をなくす不利益変更案でしたがこれを撤回したということでこれはこれでよかったと思います。
ただし、このレポートにある病休の無給化や夏冬の有給休暇削減案は撤回していないようで、不利益の度合いはそちらの方がはるかに大きいので、さらに批判を強めて欲しいところです。
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