われわれの住むこの国の国号は「にほん」「にっぽん」、漢字を当てれば「日本」だが、もともと日本列島に住んでいた人々は自らを「やまと」と称したようだ▼「やまと」に「日本」という漢字を当てて「にっぽん」と読むようになったのは7世紀、聖徳太子が隋に宛てた親書が発端▼「日出ずる処の天子が日の沈む国の天子に書を送る」という外交文書が無礼だと中国皇帝は怒ったそうで、皇帝が何に怒ったのかは議論があるようだが、ここで問題なのは「日本」の語義である▼「ひのもと」とは中国から見た日の出の方角、つまり「中国から見て東」という意味。基準点は自分たちではなく、あくまでも中国にある▼「にっぽんすごい」という論説が一部で流行っているが、「中国の東の国はすごいだろう」といくら自慢しても自慢にならないことに本人たちは気づいていない▼中国でもアメリカでもなく、自律的な価値基準にもとづいて私たちが社会を運営できるのは一体いつの日になるであろうか(善)