コロナ禍で転職を余儀なくされたが大手グループ企業の子会社に再就職できた。入社1日目の午後、半日かけて年金の説明。ようやくわかったのは、年金が徐々に401Kに移行すること。企業年金の一部が確定給付型(定額給付する従来型)から確定拠出型(運用成績で年金支給額が変動)になり、個人の裁量で拠出額を一定限度まで増やせるのだ。
「あなたの投資スタイルはハイリスク・ハイリターン型? それとも安定型?」
投資銀行の宣伝をよくよく読めば、原本割れの危険性があること、口座維持手数料が天引きされることも書かれている。
「これって要するに自己責任でショバ代払って勝手にしろってこと?」と同期入社の同僚に尋ねると「はい。自分の年金で博打やるんですわ」と即答。「こんなんいつから導入されたんですかね?」と聞けば、「前の会社ではもう10年前から。リーマンショックの時は、昼休みも静まり返ってみんなパソコンの株式市況見てましたよ」と。
自社株を買って年金が蒸発したエンロンの社員の話を読んだことがある。日本もアメリカの後を追っていたのである。うまくやれば儲かるぞという期待とともに、破綻した時は自己責任。自分の老後生活をかけて金融カジノで勝負するのだ。
「競争と自己責任」という維新の思想や哲学は、こんな形でわれわれの生活に忍び込んでくる。