▽なぜ大統領になれたか その理由はムヒカの素朴な人柄や巧みなコミュニケーション能力だけではない。拡大戦線第一期のバスケス大統領のもとで極貧層が半減した。貧困層も3分の1に減り、18万の雇用増を実現した。こうした実績の上にムヒカの第二期政権につながったのだ。拡大戦線あっての「ムヒカ政権」なのだ。拡大戦線としての連続性だ。

▽徹底した平等主義

 ムヒカがよく使う言葉に「誰も誰かより偉いなんてことはない」がある。彼独自ものではないが、その世界観がよく表れている。徹底した「平等」意識。言行一致の庶民的実生活。人びとの理性への呼びかけ。これらが彼に共感が集まっている理由だろう。

 私たちを代表するはずの政治家が、すっかり特権エリートとなってしまった代表制民主主義(自・公の国会議員は特権層そのものだ)。ムヒカはそこに別の選択肢と可能性があることを証明したのではないか。

▽感じた限界

 教育にこそ国の未来があるという強い信念のもと、ムヒカは教育問題の解決をめざしたが、ほとんど成果はあがらなかった。大土地所有者への課税もめざした。農地は課税対象ではなかったので、農場主に課税して、その税収で農村部の道路整備を進めようとした。法律は通したが、最高裁で違憲判決が出て頓挫。

 確かにムヒカは、高い理想を掲げながらも大きな成果は上げられなかった。しかし、その存在感は誰も否定できない。

▽終わりに

 最初に紹介した本の著者の萩一晶さんの熱心な取材と執筆のおかげでムヒカの「本当のメッセージ」に触れることが出来た。朝日新聞の中には、志の高い記者がいるのですね。下地毅さんや田井中雅人さんなど。

 私のこの小さな連載はレポートのつもりですが、文章自体はおおかた萩さんの表現です。是非とも、読者の皆さんに伝えたい思いで構成しました。

 私の問題意識は、過去の左派系の運動や思想の総括が、未だ道半ばであるし、一定程度の地平に到達することが課題として残っていると思うところにあります。拡大戦線に注目したのは、従来の左翼党派やグループ間の関係の問題点や、自公政権に対決する陣形の「ひ弱さ」を何とか克服できないかという問題意識からでした。ここに、何らかの教訓が示されているように感じたからです。ことはそう簡単ではないだろうとも思います。

 しかし、決してあきらめずに、野党、左派、リベラル含め全ての住民の団結で自公を歴史のクズ籠へ!(脇田和也)