「狭山再審を求める関西キャラバン(21年度)」スタート集会が、えん罪・布川事件国賠勝利報告会として開かれ、布川事件えん罪被害者の桜井昌司さん、東住吉事件のえん罪・青木惠子さん、兵庫県精神医療人権センターの吉田明彦さんらが話した(12月11日、神戸市内)。

 桜井さんは、1967年茨木県布川の強盗殺人事件で無期懲役を受け、29年間の獄中生活の後2011年に再審無罪。その後、えん罪検証を求めて国賠請求訴訟を提訴し、今年9月に勝訴が確定した。桜井昌司さんは演題の「国は人生を奪う理不尽を知れ」について、「えん罪被害者にとって国とは何か、警察、検察、裁判所だ」と話し、吉田明彦さんは「全ての恣意的拘禁、拷問にノーを」と訴えた。石川一雄さん、石川早智子さんのビデオメッセージ、主催者から「第6回狭山事件の再審を実現しよう市民のつどいin関西」(2月20日)の紹介があった。(取材・文責/高崎)

 

▽桜井昌司さんの話(要旨)

 国とは一体なんですか。私たち、えん罪被害者にとって国とは検察、警察であり裁判所です。狭山事件はなぜ、なかなか展望を開けないのか。裁判所、検察庁に責任がある。裁判長は、誰にも明らかな無実である事実を無視し、平然と有罪判決を下している。

 私たちがえん罪になった昭和40年代は、検察、警察がウソをいうとは誰も思わないような時代だった。新聞が間違った報道するとは誰も思っていなかった。今は、少しは検察・警察が怪しいと思う人が増えたけど。

 私は29年間刑務所に。今思えば、意義ある人生だ。刑務所職員は「受刑者はウソつき、信用してはいけない」と教育されている。私たちが何をいっても信用されない。外国人を苛める奴が出世する世界だ。

 石川一雄さんの無罪は、誰が見てもあきらか。例えば万年筆が発見された鴨居。警察官10数人が捜索し、3回目でようやく発見された。あり得ない。

 検察、警察官は「真面目」で悪いことをする。彼らは「治安を守る、正義を守る。悪い奴を懲らしめる」「人は信用しない。怪しい奴はウソをつく」と思っている。一方、私たち(世間)は、彼らを信用している。そういう社会がおかしい。

 狭山事件、部落民だから「何でもする」という差別、50年前はそうだった。部落民の石川さんが怪しい…、自白させて犯人にすれば正義となる。50年経って、部落差別はなくなりましたか? なくなっていない。なぜか。天皇制があるからだ。私も取調べの警察官に言われた、「俺の仕事はお前のような奴を刑務所に入れることだ」「罪を認めてやり直せ」と。

 石川さんも同じ。石川さんは根性あるから、「自白」まで1カ月以上がんばる。家族の働き手である六造さんを捕まえるという脅しに、認めるわけ。あいつら、本当に汚い。日本の社会はこれでいいのか、マスコミを含めて悪い。私はえん罪を晴らすなか変わることができたが、社会はかわらない。社会を変えるために、声を上げていく。

 狭山事件が進まないのは運動のせいでも、石川さん、弁護団のせいでもない。裁判官が悪いからだ。検察官は大きな力を持っている。法務省幹部の7、8割は検察官の出身。法務省の受けが良くないと裁判官は出世できない。裁判所は検察庁の手下なんだ。

 狭山事件の被害者の万年筆インクと、石川さんの鴨居で見つかった万年筆インクの違いは、科学、鑑定で明らかになっている。検察側は「反論する」と言いながら、三者協議で逃げている。「間違っていました、ごめんなさい」というのが人間の道だ。

 私は、石川さんの再審無罪を勝ちとるため、何でもやろうと思う今の社会を諦めることなく、理性的に声を上げていく。「違う」と声をあげていくことが大事だ。

 日本の死刑制度に問題がある。国家が人を殺す権利はない。国家こそ、人の命が大切であるという立場に立たなければ。えん罪を生み出さない、人の人生を奪うこともなくする。石川さんが1日も早く自由になってほしい。晴れ晴れとした気持ちになってほしい。