読売新聞大阪本社と大阪府は昨年、12月27日、情報発信など8分野で連携・協働を進める「包括連携協定」を結んだ。包括連携協定とは自治体と民間企業が、「相互の資源の有効活用」を目的とするもの。しかし、報道機関が公権力と領域・分野を横断して「包括的」な協力関係を結ぶのは異常な事態である。

 連携の主な取り組みのなかには、「万博の開催に向けた協力」も含まれている。万博予定地の夢洲に、大阪府・市はカジノ建設を予定している。夢洲のインフラ整備、万博会場建設、万博運営費などで4000億円を超える。市民生活に重大な影響を与える巨額投資にかんして、報道機関が公権力と連携することは許されない。

 1970年代、読売新聞大阪支社には「反差別、反権力」の気風があった。今回の協定に憤りを感じているマスコミ労働者は多くいるはずだ。国政政党「日本維新の会」の副代表が首長を務める西日本最大の自治体、大阪府がこうした協定を結ぶことの影響は看過できない。

 吉村洋文知事は記者会見で「報道活動への制限、優先的な取り扱いがないことを双方確認している」と主張した。しかし読売新聞大阪本社側は「『萎縮しないか』と言われれば『萎縮しないでしょう』というほかない」とその態度はあいまいだ。権力と報道機関の「一体化」は、知る権利を歪め、民主主義を危うくする可能性が大きい。ただちに協定の解消を求める。(坂口竜一)